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執事と妹の想い②

『起きて……起きてっ……今のお兄様は――あの執事の言葉を聞いて……復讐を続けていく事に戸惑いを感じているわ……つまり、城にかけられた呪いを解く――最大のチャンスが来たという事よ……早く――私のオルゴールを……こわ……し……て……っ』 可愛らしくも切なげな声で、意識を手放しかけている僕へ向けて水色のドレスを着たリリーという女の子が訴えてくる。 ――そのせいで、ハッ……と我にかえる僕。 ハッ……と我にかえった時には――既に半ば無意識の内に【リアムという青年の怨念】に憑依され、デュラハンの見た目をしているライムスへとギュッと強く抱き締めていたため慌てて離れる。 (リリーという女の子が言うとおり……早く――オルゴールを……壊さなくては……添うしなければ――きっと永遠に……この城から出られなくなる……) ちらり、と【リアムという青年の怨念】に憑依されたデュラハンの見た目をしたライムスを一瞥した時、傍らに寄り添うようにして体全体が緑色に発光していて穏やかな笑みを浮かべている黒い燕尾服を身に纏った男の人が、先程――僕がしたのと同じように――ギュッと強く抱き締めている光景が目に入ってくる事に気付く。 おそらく、尚も傍らにいて穏やかな笑みを浮かべ続けている燕尾服を身に纏ったあの男の人が……リアムという青年と互いに愛し合ったという執事なのだろう。 そして――僕は執事の男の人や妹のリリーが【リアムという青年の怨念】による復讐を止めると同時に、城にかけられた呪いを完全に解いて皆で今まで暮らしてきた愛する城の中で永遠に眠り続ける――という切なる願いを叶えるために、大理石の床に転がっているリリーのオルゴールを拾い上げるとそれを壊すために右手を 思いっきり振り上げるのだった。

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