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壊れるオルゴール、解かれる呪い①
――ゴトッ……
床へ落ちるオルゴールの音が――静寂に包まれていた城のホール内に響く。
僕の予想では、見事な装飾が施された陶器のオルゴールは大理石の床に向けて思いっきり叩きつけるようにして落とせば――粉々とまではいかないまでも、少なくともヒビくらいは入る――筈だった。
しかし、僕がオルゴールを渾身の力で叩きつけても――粉々になるどころか、その見事に美しい形を保ったまま床に落ちるだけだ。何度も試してみても、粉々どころかヒビを入れる事さえ出来ないのだ。
「ど、どうして……これだけ――オルゴールを床に叩きつけてるのに……ヒビさえ入れる事が出来ないんだろう……っ……」
「ったく……マコトの恋人くんの力が足りねえんじゃねえのか?ほら、俺様に――課してみろ!!」
なかなかオルゴールを壊す事が出来ない僕に対して痺れをきらしたのか、ナギが少しだけ呆れた様子をあらわにしつつ渋々ながら言ってきたため――僕はナギにオルゴールを渡す。
――その後、ナギにその役目を託したのだが僕よりも明らかに力がありそうなナギでさえも何度も試してみてはいるが、オルゴールを壊す事が出来ない。何度も何度も床に叩きつけてみても、サンがオルゴールに向かって弓矢を放ってみても――挙げ句の果てに誠が体重をかけて踏み潰そうとしてみても――オルゴールはその形を保ったままヒビひとつ入らずに床に転がっているのだ。
『――まったく……優太は頭が固いんだよ。ひとつの事に囚われすぎず――別の方面から考えてみると……答えが出てくるよ……』
ふと、想太の――懐かしい声が僕の脳裏に甦ってくる。
あれは――確か、二人でクイズ番組を見ていた時に、どうしても答えがわからない僕に向けてクスクスと悪戯っぽく笑いながら想太がヒントをくれた時の言葉だ――。
――ひとつの事に囚われすぎず、
――別の方面から考えてみる……。
そして、パズルのピースが嵌まった時のように――唐突にふっ……とあるアイデアか思いつき、それを試すべく――僕はナギからオルゴールを返してもらうのだった。
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