143 / 713

新しい仲間、そして新たなる場所へ①

※ ※ ※ 「ユウタ……おかえり――城の呪いは……解かれてた!?負傷してた皆の回復は済んだから……もう少ししたら元気になってくると思うよ。それと…………」 「ゆ、優太くん……あの、これ……君の制服――。さすがに、そのメイド姿のままじゃ恥ずかしいよね?」 「……引田、もう――体調は大丈夫なの!?あ、そうか……あの時のメイド服のままだった……すっかり――忘れてたよ」 城の中へと戻ると、ミストが熱心に回復魔法を負傷した誠達四人へとかけていた。そして、慌てて僕がミストの側へと駆け寄っていき会話をしていると――ふいに、引田がミストと僕の会話を遮るようにして遠慮がちにオズオズしている様子で、この城に捕らえられる前に着ていたダイイチキュウの学校の制服を僕へと差し出してきたのだ。 「優太くん――どうして、君は……ぼくを怒らないの?ぼくは今まで、散々――君と仲間達に対して酷い事をしてきたのに。君が愛する木下誠にだって酷い事をしてきたんだよ!?それなのに、どうして君は……今みたいに優しい笑顔を向けてくれているの!?」 「だって……引田らは悪い奴じゃないって……分かってるから。そりゃあ、確かに最初は酷い事を沢山してきたけど――ちゃんと反省してくれたし、僕の仲間であるミストだって……助けてくれたじゃないか」 俯きながら話してくる引田の手をギュッと握り、僕は自分の素直な思いを彼へと告げる。そんな僕と引田のやり取りを見て、回復魔法の効果のおかげで少し元気になった誠から睨まれてしまったけれど――今だけは許して、と心の中で誠へと謝るのだった。 「あ~あ……君たちには――かなわないや。それにしても、金髪の男から奪ったこの城も――ぼくがこの世界で今まで暮らしてきた住み処も――全部失っちゃった。悪い事はするものじゃないよ……おかげで、一文無しだ……はあ、これから――どうしようかな……」 「ご主人サマ……ライムスは……貴方についてゆきマス……」 ふいに、引田が盛大なため息をつくと――それに反応するかのように本来のプルプルとしていて透き通るような水色のゼリー状の姿をしているライムスがピョンピョンと跳ねながら主である引田へ向かって言う。 「皆さえ良ければだけど――引田、それにライムス……君達を僕ら一行に加えて仲間にしたいと思ってるんだけど……皆は、どうかな?」 僕は城の呪いが完全に解かれる少し前からずっと考えていた事――つまり、引田とライムスを仲間に加えたいという提案を誠とミスト――それにナギやサンへと話して皆の意見を聞いてみようとする。 かなり長い沈黙の後――、 「優太がいいのなら……俺は別に構わない。ただし、優太に手を出すような事をしたら――今度こそ許さないからな!?」 「ん~……ヒキタがミストの言う事を何でも聞くっていうなら……いいよ~♪」 「……勝手にしろ」 「俺様は別にどうでもいいぜ~……まあ、人手があった方が……後々、楽になるしいいんじゃねえの?」 さすがに、すぐには皆の答えは出ないと思ったものの――最初的には皆からの同意を得る事が出来て、僕ら一行に――引田とライムスという新たな仲間が加わるのだった。

ともだちにシェアしよう!