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新しい仲間、そして新たなる場所へ②
※ ※ ※
「それじゃあ……色々とお世話になりました。また、何処かで――」
「ああ……此方こそ色々と世話になった。それと――無礼を働いて……済まなかったな。お前達がこれから何処へ向かうのかは知らないが――道中気を付けろ……それと、何かあれば……またこの城に来るがよい。お前らならば、歓迎するとしよう」
その後、引田とライムスを新たに仲間として加えると決めた僕らは――再び知花に囚得られてしまった想太と、このミラージュという世界の第二王子で知花の実の弟であるシリカという男の子を救いに行くためと――その手掛かりである想太が僕へと託した栞に貼り付けられた白い花を探しに行くという目的を果たすために呪いから解放された城と城下町を去ろうとするのだった。
しかし、その前にリアムの子孫である金髪の男の人へ聞きたい事があるのを思い出したため――僕はピタッと足を止める。
「あ、あの……この白い花について――何か知っている事は有りませんか?」
「この白い花は……何処かで見た覚えがあるな――ああ、そうだ……確か、相棒のエルフと暮らしている辺境の村の市場で……この白い花を大量に売りさばいている男がいたんだ。この白い花は……良い金ヅルになると言っていた。この城から南へと真っ直ぐに進んで行くと――サラフェナの森がある……確か、そこから大量に採取してきたとその男は言っていたが……あてにはならないな」
僕は金髪の男の人に、想太が手掛かりとして託してくれた栞に貼り付けられている白い花の存在を知っているかどうか、少し不安げに尋ねる。すると、ようやく――白い花の情報が手に入ったため思わず笑みが零れてしまった。
「ねえ、それって……もしかして――こんな男じゃなかった!?もしも、そうなら……ぼくも知ってる……」
「ああ……そうだが、なぜ……お前が知っているんだ?」
「だって、この男から……ぼくも色々な物を買ったから。このカメラとか、優太くんに着せてたメイド服とか……他にも色々とね。ほら、これ見てよ……優太くん、それに木下誠……。こいつ、きっと……ぼくらが前にいた世界から来た奴だよ。だって、スーツを着てる――まあ、いずれ対面する事になると思うけど……とにかく、その村の市場とやらを目指してみる?」
僕が白い花の情報を僅かでも得られて嬉しく思っていると、ふいに――引田が懐から何かを取り出して金髪の男の人へと見せる。
よくよく見てみると――それは、一枚の写真だという事に気付く。
その写真には、どこかの市場らしき場所で満面の笑みを浮かべながら、僕に着せていたメイド服を手に持って写真を撮っている人へと見せつけているかのような様子の引田と、その隣には穏やかな笑みを浮かべているスーツ姿の男の人が写っているのだ。
「あ、あと……もう一つ……聞きたい事があるんです。貴方の名前を――教えてください」
「…………レアムだ。次に会う時までには――覚えておけ」
引田の言葉を聞いて頷いてから、僕は金髪の男の人へと――もう一つ、聞きたい事を尋ねてみた。それは、その金髪の男の人の【名前】だった。すると、金髪の男の人――レアムは少し照れくさそうにしながら自分の大事な名前を教えてくれたのだ。
そして、僕ら一行はレアムと引田がスーツ姿の男の人から物を買ったという――ある村の市場を目指して城と城下町から去ると――そのまま南へと歩みを進めて行くのだった。
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