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ワーウルフにも事情がある①
「その白い花は――そうか、そういう事か。よもや、キサマら……あの余所者のニンゲンの男と――通じている訳ではあるまいな?あのニンゲンの男は――かつて、この村の市場でその白い花を売りさばいていたからな。挙げ句の果てに、あのようなおぞましい事まで――」
「ち、ちょっと待ってよ……あのニンゲンの男って――こいつの事だよね?だったら……ぼくらの事を誤解してるよ。ぼくらは、あんな奴と通じてなんかいないし。そもそも、あのようなおぞましい事をしたって……何なの?ぼくらを誤解する前に、きちんと説明するのが礼儀ってもんじゃないの?」
ワーウルフにソックリな容姿の男の言葉を遮るかのように引田が懐から先ほどの写真を取り出して少し強めの口調で言い放つ。そして、引田が以前に会ったというスーツ姿の男の人の写真を――ワーウルフらしき男へと見せつけるのだ。
「――そうそう、ヒキタの言う通りだぜ。俺様達は単に白い花の情報を知りたいだけだし、ましてや――てめえらに危害を加えようなんて思ってねえよ。そうだよな――サン?」
「ああ、ナギの言う通りだ。それよりも、私としては――この村で何があったかの方が気にかかるがな。おい、ワーウルフよ……あの建物にこそこそと隠れている奴等は何だ!?なぜ、先ほどから――怯えたように此方を見つめているのだ?」
ナギは引田の言葉に賛同した。
そして、その後にナギから同意を求められたサンは一度頷いてから――チラッと民家のような建物へと目線を向けると、やはり我々に対して怯えているかのような素振りを見せている中の人々の行動に対して、僕と同じように疑問を抱いたせいか怪訝そうにワーウルフへと尋ねるのだった。
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