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ワーウルフにも事情がある②
「…………キサマらを完全に信用した訳ではないが、確かにこの村で何が起こったのかを話さないのは――礼儀に反するな。良いだろう、順を追って説明しよう――」
「まず、我輩の名はガルフという。そして、ある者から――この村を守る仕事をするように依頼された。そのヒキタとかいうニンゲンが言うように最初はこの村は栄えていた――しかし、あのニンゲンの男が現れてから全てが変わった……それも、悪い方にな……」
引田とサンに責められるように詰め寄られたワーウルフ(ガルフというらしい)は――小さくため息をついてから、観念したかのように淡々と僕らへと説明し始める。
「あのニンゲンの男は――この村に来てから最初の内は特に問題はなかった。良い金ヅルがあるという話しをすると目の色を変えて飛びついてきてはいたが、それは――物の話しだったから……まだ問題だと思っていなかったのだ。しかし、ある日を境に……その対象が物以外にも向くようになり……っ……」
「……物よりも、この村に暮らしている容姿の良いエルフの方が良い金ヅルになると言って……容姿が優れている村中のエルフを片っ端から誘拐し――そのまま姿を消したのだ。誘拐されたエルフの中には――我輩の親友である者もいた」
ガルフというワーウルフの説明を聞いて――僕らは思わず言葉を失ってしまう。そのように辛い事情が、この村に襲いかかっているなど予想もしなかったからだった。
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