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ワーウルフにも事情がある③

「なあ、ガルフとやら……俺様達にとっては――てめえの親友が誘拐されたとかいう事情よりも、白い花の情報が知る事の方が重要なんだよ。それと、それを売りさばいていたニンゲンの男とやらの情報もな。そのニンゲンの男は、今――何処にいるんだ!?」 「――そ、それは…………」 ナギがぶっきらぼうに尋ねると、ガルフは何故か少しばかり気まずそうな表情を浮かべつつ唐突に言葉を切ってしまう。 「――そのニンゲンの男が何処に行ったのかという事を知っていそうな輩に――心当たりはあるのだ。だが、少し厄介な存在でな……これまで何度も捕らえようとしてきたものの、幾度となく失敗してきた。だが、その輩は……ニンゲンの男の側近であり一番近しい存在だ。今も――我輩の部下達がソイツを捕らえようと奮闘しているはず……しかし、そろそろ戻ってきてもいい頃合いなんだが――」 「ガルフ殿――ただ今、戻りました!!そして、コンノというニンゲンの男の側近である輩――アラクネを捕らえて参りました!!」 ガルフが神妙な顔つきで僕らへと説明してくれていた時、ふいに大きな網を手に持ったガルフの部下らしいワーウルフの集団がドタドタと駆け寄ってきたのだ。 「うむ……ご苦労だった――そうか、ようやく……コンノというニンゲンの男の側近であるアラクネを捕らえる事ができたか。さて、忌々しい蜘蛛女のアラクネよ……コンノというニンゲンは……今、何処にいるのだ!?」 部下がアラクネという存在を捕らえた事によって、怒りと喜びとが混じり合った複雑な表情を浮かべながらもガルフは網の中へと捕らえられてしまっているアラクネをギロッと睨み付ける。 ――その大きな網の中には、上半身は綺麗な人間の女の人で下半身は蜘蛛の姿という奇妙な容姿をしている生き物が必死で網の中から逃れようと、もがいているのだった。

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