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アラクネの逆襲①

※ ※ ※ 「もうっ……降参するって――何度言えば分かるのよっ!?こんな事をしたら、あたしのご主人様のリッくんが黙っていないんだからっ……早く、この中から出しなさいよ!!」 スーツ姿のニンゲンの男の側近と思われるアラクネとやらは尚も網の中で――もがき苦しみながら甲高い声で喚いている。上半身は艶のある黒髪の美しい少女の姿なので下半身がオレンジと黒い縦模様の蜘蛛の姿である事さえ除けば――パッと見はニンゲンの少女に見えなくもない。 ――リッくんというのはコンノというスーツ姿の男の愛称なのだろうか? そのような呼び方をするという事は、やはり――それなりにコンノというスーツ姿の男とアラクネは親しい間柄なのだろうと思った。 「うっ……ううっ……ひどいっ……酷すぎるわよっ……あたしは、ただ――リッくんに命令されて……この村のエルフ達を連れさっただけなのにっ……本当はこんな事したくなかったのに……っ……」 「おいおい……泣いてやがるぜ?流石に少しは信じてやってもいいんじゃねえのか!?大体、エルフ達の誘拐を企んだのは――スーツ姿のニンゲンの男なんだろ?だったら……全部、スーツ姿のニンゲンの男が悪いんじゃねえか……」 今まで甲高い声で喚きながら、僕らへと訴えていたアラクネが網の中でポロポロと大粒の涙を零しながら尚も苦しそうに無我夢中で、もがき続けるのだ。 すると、そんなアラクネの様子を目にして少なからず同情してしまったのかナギがバツの悪そうな表情を浮かべながらアラクネへチラと目線を向けた。 ――すると、 「ありがとうっ……あなただけは――あたしを信じてくれるのねっ……流石は――リッくんが特に気に入ったエルフなだけはあるわっ……!!」 ――ヒュッ…… ――ビュッ……!! 「なっ……なんだっ……!!?」 「うふふっ……女の涙は――信用しない方が良いと思うわよっ……リッくんが選んだ……恋人候補のエルフのお兄さんっ……!!」 ふいに、つい先ほどまで目に大粒の涙を浮かべて切なそうに泣き喚きつつ網の中から逃れようと――もがいていたアラクネがニッコリと頬笑みながらナギへお礼を言ったかと思うと、網の内側の小さな隙間から銀色の糸が勢いよく飛んできて、油断しきっていたナギの体を――あっという間にグルグル巻きにしてしまい拘束してしまうのだ。 「アラ……ク……ネさま……アラクネ……さ……ま……次なる……ご命……令……を……ご命令……を……くださ……くださ……い……ひゃはっ……ひゃはははっ……」 そして、ガルフに報告をしに来たワーウルフの集団の様子が明らかにおかしい……と気付いた時には――既に僕らは逃げ出さないように周りを取り囲まれてしまっていたのだった。

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