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いざ、作戦決行へ①

「ったく……何で、ぼくが――こんな事をっ……!?」 「――いいから、優太の言う通りにしろよ……引田。お前、優太には恩があるんだろう?」 その後、引田と誠が協力し合って傷だらけのガルフさんの体を井戸の中から外へと出してくれた。最初から僕に協力的な誠とは裏腹に引田はブツブツと文句を言っていたが誠の一言で見事に黙り込んだ。何だかんだ、引田は僕に恩を感じてくれているらしい。 「ユウタ、気絶魔法はミストが唱えるけれど……実はこの気絶魔法は危険な物なんだ。気絶魔法を唱える事によって強烈な光が生じる……それを見る事によって気絶するんだけど――」 「――この気絶魔法の厄介な所は、相手が敵であろうと味方であろうと関係なく光を見る事によって気絶させる点なんだ。つまり、ミストが魔法を唱えた瞬間に外にいるサンやガルフさんに目を瞑るように知らせる必要がある……その役目をユウタにお願いしたいんだ」 ミストの言葉を聞いた僕は、初めて気絶魔法の厄介さと怖さを知る。以前にいた世界で見た映画やアニメの中に出てくる魔法は万能なものだと思い込んでいた。魔法は好きように使え、都合よく利用出来る物だと勘違いしていた。 今のミストの真剣な表情を見て、魔法は万能であると同時に――厄介さや恐ろしさを兼ねているという事に気付いたのだ。 しかし、迷っている暇などない。 僕は無言のままミストに向かってコクッと頷いた。その役目は、先程――僕が作戦を決行するという決意をした時点で引き受けるしかないのだから――。 「▼▼▼ЙЙЙΨΨΨΚΘΘΘΚΦΦΦβΩ」 少し長めの詠唱をミストが唱え、杖の先端がボンヤリとした光に包まれると――そのまま井戸の入り口に狙いを定めボンヤリと光り続ける杖を振り上げる。 「みんなっ……目を瞑って!!」 僕はミストの杖全体が眩い程の黄金色の光に染まりきる前に、井戸の中にいる味方は勿論のこと――井戸の外にいる仲間達へ向かって――これ以上ないくらいの大きな声で叫ぶ。 井戸の辺り一帯が眩い程の黄金色の光に包まれて覆い尽くされる前にギュッと固く目を瞑る僕ら。 「ガルルッ……キャインッ……キューン……キャン……キャンッ!!」 目を瞑っていても聞こえてくる、井戸の外側で僕らを待ち伏せして襲おうとしていたアラクネに魅力されてしまったせいで操られた哀れなるガルフさんの部下のワーウルフの群れ達。 悲痛そうな鳴き声が外から聞こえた後で――徐々にだが井戸の外は無音状態となり、暫くは井戸の中でジッとして様子を伺っていた僕らだったが――やがて、段々と黄金色の眩い光が収まりつつあるのを感じて恐る恐る目を開けるのだった。

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