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満月の光に照らされて②
※ ※ ※
――リィーン、リーン……
――リィィーン……リィーン……
夜も更けてきたというのに……鈴腹虫の群れの甲高い合唱が――夜宿しようと決めた場所の周辺に響き渡る。
「ミスト……引田、何か手伝う事はある?僕も――ガルフさんの看病を交代しようか!?」
「ユウタ……ガルフさんの調子は大分良さそうだよ――。でも……う~ん、そうだなぁ……何だかんだでヒキタも頑張ってくれているから――交代はしなくてもいいかも。あ、そうだ……この桶に、あっちにある泉の水を汲んできてくれる?あと、もしもサンに会ったら無理しないで早めに休むように言ってくれるかな?」
「う、うん。分かったよ――ミスト……」
あれから、比較的にだが原型を留めている建物へと入った僕らは今夜はここで夜を明かす事にして誠とライムスは共に見張りを行い――ミストと引田は未だに本調子ではないガルフさんの看病をそれぞれ行っていた。
ミストから桶を渡された僕は見張りで疲れ果ててしまったせいでスヤスヤと寝息をたてている誠を起こさないように慎重な足取りで、この建物から少し離れた場所にある泉へと――向かうのだ。
泉に着いた僕がミストから渡された桶に水を汲もうとした時、ふいに前方に僕から背を向けた状態で尚且つ上半身裸で泉に浸かっているサンの姿に気付く。
――おそらく、水浴びをしているのだろう。
僕の気配にも気付かずに、熱心に水浴びをするサンの姿は満月の眩い月明かりに照らされ、とても幻想的な光景で思わず息を飲んでしまうくらいに見惚れてしまうのだった。
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