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満月の光に照らされて③

そして、ふいに――泉の水に浸かっているサンの背中に浅黒い肌の地の色とは違う色の箇所がある事に気付く。そこだけが、僅かに赤くなっているような気がするのだ。 もしかしたら、以前に火傷でもした後の名残なのだろうか――。 そう疑問に思ったものの、流石に面と向かっては聞き辛いせいで無言のまま――尚も僕の方に振り向かない素振りすら見せないサンに対して目線を向ける事しか出来ない。 「…………何だ、さっきからジッと私の方を見て……何か言いたい事でもあるのか!?」 「……え、えっと……その……ミストが――早めに休んだ方が良いって言ってたよ……」 「そうか…………」 僕が月明かりに照らされたサンの姿をジッと見ていた事など、お見通しだったらしく――急に僕の方へ背中を向けていたサンが勢いよく此方へと振り返って今までに見た事もないような厳しい目付きでジロリと睨み付けてくる。 僕の方へ振り向いたのが余りにも急過ぎた事と、そのサンの厳しい剣幕を目の当たりにして僕はビクッと体を震わせつつも何とか彼へと伝えた。 ――辺りに沈黙という名の気まずさが流れる。 (やっぱり……サンは――少し苦手だ……まあ、でもミストが心配している事は伝えたし――桶に水を汲んで、早くミストとヒキタの元に戻ろう……) 心の中で、そう思った僕は桶を手に持ったまま何とか沈まないように慎重な足取りで泉の中へと入って行くのだった。

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