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スティール・フィッシュにご用心①

※ ※ ※ ――バシャッ……パシャ…… ――パシャッ…… 当然といえば当然なのだけれど、夜の泉の水は冷たい。絶対に転ばないようにして水を汲まなくちゃ――と警戒しつつ桶を水面に近付けてから無事に汲み終わり、すっかり安心しきってしまった時――ふいに僕の側に水の波に揺られて何かが漂ってきて足に当たった事に気付いた。 それは、僕が持っている桶とは違う桶だった。どうして、こんな物が波に揺れる水に漂ってきたのだろう――と、自分が持っている桶に異変が無いか何となく確認してみる。 ――僕が持っている桶には特に問題がない。たっぷり、と泉の水が入っているだけだ。 「あ、あの……っ……これを持っててもらっても――いい……ですか?」 「…………それは構わないが、一体……何のつもりだ!?」 しかし、何となくその漂ってきた入れ物が気になってしまった僕は水浴びをし終わり、近くにいて衣服を着替え終えたばかりのサンへと僕の持っている桶を渡しつつ、遠慮がちに頼み込んだ。すると、僕が余りにも急に予想外の事を頼んでしまったからか――怪訝そうな表情を浮かべていたが結局は渋々ながらも僕の頼みを引き受けてくれた。 ――チャプッ…… ――チャプ……チャプ、チャプ…… そして、僕は相変わらず波間を漂っている得たいの知れない桶を慎重に拾い上げると、怪訝そうな表情を浮かべたままのサンを横目で一瞥しつつ――その謎の桶の中身を確認するために恐る恐る覗き込むのだった。

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