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スティール・フィッシュにご用心②
――パシャ……
――ポシャンッ…………
「……っ…………!?」
僕が桶の中を覗き込むと、何かが水の中で跳ねたような音が聞こえたような気がした。しかし、その音が聞こえてきてから少し経っても――何も起こらない。
(――何か……跳ねたような音が聞こえてきたような気がしたけど……僕の気のせいか――早く、ミスト達の元に戻らないと……っ……)
僕が少しだけ得たいの知れない音が聞こえてきたような気がした事に対して、不安を覚えながらもミスト達がいる建物へと戻ろうと一歩踏み出した時――、
「……ギィッ…………ギィィッ……!!」
僕が今手に持っていて波間を漂って流れついてきた桶の水の中から、思わず耳を塞ぎたくなるように不快で――けたたましい鳴き声をあげながら何か小さなものが僕の顔を目掛けて飛び出してきたのだ。しかも、それだけではなく――そのまま僕の顔を飲み込もうとしているかのように大きな口を開けて鋭い牙を剥き出しにしながら噛み付こうとしてくるのだ。
「…………うっ……!?」
幸いにも咄嗟に顔を背けた僕は、ソレに完全に噛み付かれて飲み込まれるような事は無かったのだが、少し顔を噛み付かれてしまい、頬の辺りを傷つけてしまったため少量ではあるものの血が流れて頬を伝っていってしまう。
内心では恐怖と不安に支配されて、心臓が飛び出してしまいそうになるくらいにドキドキしつつ、泉の淵に尻餅をついて身を小刻みに震わせながらも――そのまま手に持っていた桶を泉の中へとポイッと放り投げる僕なのだった。
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