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スティール・フィッシュにご用心⑤

「マコトの恋人よ……お前の顔に噛み付いた親玉のスティール・フィッシュは執拗に狙ってはくるが――防御力自体は低い。恐らく、矢を2・3発当てれば始末できるだろう。だから、集中して親玉のスティール・フィッシュの体に矢を当てろ」 「う、うん……分かった――何とか頑張ってみるよ!!」 サンの頼もしいアドバイスを聞いて、泉の中を慣れた動きで移動しながら執拗に僕を狙ってくる親玉のスティール・フィッシュへ向けて弓を構える――が、水の中はお手のものというかのように素早く移動しているため矢を当てるのは中々難しい。 ――シュッ…… ――バシュッ…… スティール・フィッシュの親玉は飛び魚のように勢いよく水音をたてて跳ねながら僕を狙ってくるのだが、弓を構えて矢を放ったタイミングを見透かしているかのように――矢が体に当たる直前に水の中へ隠れてうまいことかわして、そのまま素早く水の中をスイスイと泳ぎながら移動してしまう。 ――そして、また執拗に僕を狙ってくるのだ。 「よし、やっと……矢が当たった――あと、何とか一発だけでもっ……」 「いや、このままじゃ――埒があかないっ……これだけはしたくなかったが仕方がない!!」 僕が執拗に狙ってくるスティール・フィッシュの親玉に苦戦しながらも、何とか一発矢を当てたのを喜んでいると何故かサンが苦々しい表情を浮かべながら言い放つ。 ――ゴォォォオッ……!! サンが泉の中を泳ぎ続けるスティール・フィッシュの群れに嫌気がさしたのか忌々しそうな表情を浮かべつつ――そこへ向かって手をかざす。 すると、ミストのように杖を使う訳でもなく、ましてや魔法の詠唱を唱える訳でもなく、サンの手から直接真っ赤な炎が出現し――その場に集うスティール・フィッシュの群れを焼き尽くすのだった。そのせいで、スティール・フィッシュの群れ達の断末魔の悲鳴が――辺りに一斉に響き渡る。 「ギッ……ギィィッ……ギィィィーッ……」 不思議な事に――少し怖いと思う半面、手から直接真っ赤な炎を出現させるサンを美しいと思い見惚れてしまっていた僕はスティール・フィッシュの甲高くて不快な鳴き声を聞き、何故だか途徹もない怒りの感情に支配されてしまい――、 「――うるさいっ……それに、いい加減しつこいっ……!!」 ――バシュッ…………!! 注意深く狙いを定め、渾身の矢の一撃をスティール・フィッシュへとお見舞いしてやったのだった。 そして、そのままスティール・フィッシュの親玉も仲間である群れ達も――暗い暗い泉の底へと跡形もなく沈んでいくのだった。

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