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~初めて見るサンの笑顔~

※ ※ ※ リィィーン……リィン…… リィン、リィーン……… スティール・フィッシュとの戦闘を終え、借りていた弓矢を返した僕はサンによって半ば強引に泉の中から連れ出され――泉の側にそびえ立つ大樹の下へと連れて来られたのだ。 ――名も知らぬ大樹の周りに集まる虫の鳴き声と風に吹かれてサワサワと擦れ合う草の音とが絶妙に混じり合い、心地よい音が辺りに響き渡る。 「おい――マコトの恋人よ。スティール・フィッシュに噛み付かれた傷が――痛むのだろう?血が出ているぞ……まったく、忌々しい低級魔物だ。そんな事をした所で……本物の半魚人などなれる筈もないのに……哀れなヤツらだ」 「――きっとスティール・フィッシュ達も……たとえ本物の半魚人になれなくても生きていくために必死なんだよ……人の顔を盗んで半魚人になりすますっていうやり方は間違っていたとしても――彼らはそうやって生き延びていくしかないんだ。だから…………」 仕方がない――。そう言おうとした僕だったけれど急に――これ以上ない程に真剣な表情を浮かべてジロッとサンから鋭く睨み付けられ思わず息を飲んで黙ってしまう。 「――だから、お前はスティール・フィッシュを許すというのか?私なら、許さない……私の生死をおびやかす者には――いかなる理由があろうとも必ず報いを受けてもらう」 「……サ、サン――だよね!?」 サンの余りの変わりように声を震わせながら、おそるおそる尋ねる。確かに、僕は寡黙で何を考えているのか分からないサンを苦手に思っていた。しかし、今まではサンを心の底から恐ろしいとは思った事はなかった。今のサンの顔には――鳥肌がたつ程に強い【憎悪】の感情が滲み出ているのだ。だからこそ、そのサンの淡々とした言葉を聞いて――心の底から恐ろしいと思ってしまう。 たとえ、それが一時的な事だとしても――。 「…………済まない。私とした事が……感情的になりすぎてしまったな。ほら、これで――少しは良くなるだろう。いずれ、この血も止まる筈だ……早く、ミスト達の元へと戻るぞ」 「う、うん……あの――もし、何か悩みや苦しい事があったりしたら……僕に言ってね。だって、僕らは――仲間なんだから……」 「――ふん……お前では頼りなさすぎる。しかし、考慮はしておこう」 そう言って、どことなく照れくさそうに笑うサンを見て――僕はホッとする。そして、安堵すると同時に今になってある事に気付くのだ。 ――仲間になってから、初めてサンの笑顔を見たという事に。 その後、サンと僕はミストに頼まれていた水の入った桶を手に持ちつつ、共にミスト達が待っている建物へと戻って行くのだった。

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