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ようこそ、【死と始まりの塔】へ③
「あれ……そういえば――ヒキタとライムスは何処に行ったの!?さっきまで、ここにいたのに……っ……」
「えっ…………!?」
勝手に開いた目の前にある扉を恐怖と不安を抱きつつ見据えるばかりだったが――勇気を出して、そのまま扉の中に入ろうと一歩踏み出そうとしたその時――急にミストが心配そうな表情を浮かべながら尋ねてきたためピタッと足を止めて辺りを見回してみる。
(変だな……確かに――ミストの言うとおり引田とライムスがいない……まさか――気付かないうちに何かに襲われたなんてないよね……でも、周りには何もいなそうだし……引田とライムスだけを狙うなんて……少し変かも……)
「ねえねえ、皆……これ見てみなよ……この塔って凄く面白いね~。これ、この……ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家みたいな装飾さ……全部、色とりどりの石鹸で出来てるんだよ!?」あの生クリームの飾りも、クッキーとかのお菓子も、全部が石鹸で出来てる。いや~……何で石鹸なんだろうね!?もしかして、何かを石鹸の香りで誘き寄せるため――だったりして!!」
僕ら全員が引田とライムスの行方を心配し始めて、辺りを必死で探していた時――ひょっこりと引田とライムスが何事もなかったかのように戻ってきた。どうやら、引田はライムスを引き連れて塔の周りを軽く散策していたらしい。ダイイチキュウにいた頃、共に通っていた学校ですら見た事がないくらいに興奮気味の引田の様子を見て――思わず笑みが自然と零れてしまった。
しかし、そんな余韻などお構い無しに――、
――ブィィィーン……ブゥゥ、ン……
引田とライムスが無事に見つかって安堵しきっていた僕の耳に何かが飛んでいるかのような音――つまり、羽が擦れ合うような音が聞こえてきた。他の皆も気付いたようだが――引田一人だけがキョトンとして警戒を露にしている僕らの顔を不思議そうに見つめている。
その羽音は、引田の背後の方から聞こえてくるというのに――珍しく興奮している状態のせいか、引田だけが気付いていないのだった。
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