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ようこそ、【死と始まりの塔】へ④

「……引田、側に何かがいるっ!!今すぐ……さこから離れてっ……!!」 「あれは――ヴァンプモスキートとハニービーの群れだ!!ヴァンプモスキートは生き血を吸う昆虫の魔物で……刺されて吸血されれば麻痺状態となり危険だ――ヴァンプモスキートとハニービーが結託してクイーンビーの元へと運ぶ前に――さっさと塔の中に入れ……っ……ここは――我が輩が何とかすら!!」 ガルフさんが己の武器である銃を構えて、緊迫した様子で僕らへと言い放つ。引田はといえば――ガルフさんの忠告を聞いた途端に先ほどの塔の装飾に対して興奮状態で楽しそうに話していたのが嘘かのように慌てて僕らの元へと駆け寄ってきた。 ――【キィィィィーッ】 ――【ギィィィーッ】 僕が銃を構えたガルフさんをこの場に残していいものか迷いつつ、心の中で罪悪感を抱きながらもガルフ以外の皆と共に塔の中へと入ろうとしていると急に【死と始まりの塔】の三角屋根のてっぺんにあるチョコが半分かかっている真っ赤な苺を模した装飾から――凄まじく不快になる甲高い音が響き渡ってきたため咄嗟に耳を塞いでしまう。 ワーウルフであるガルフさんは僕らよりも遥かに聴覚が過敏であり発達しているからなのか、持っていた銃を地面に落とし、顔を歪めて苦痛そうな表情を浮かべながら――もがきつつも必死で両耳を塞いでいたのだ。 そして――【死と始まりの塔】の三角屋根のてっぺんから響き渡ってきた不快音が苦痛だと感じるのは、ヴァンプモスキートやハニービーの群れも同じらしく――たまったもんじゃないといわんばかりに慌てて僕らがいる場所から離れて何処か遠くへと勢いよく飛び去ってしまうのだった。

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