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ようこそ、【死と始まりの塔】へ⑤

「ようこそ、俺の最高傑作である――死と始まりの塔へ!!俺はずっと……君たちが来るのを楽しみに待っていたんだ――さあ、この塔の中で大事な存在が首をなが~くして待っているよ!?邪魔な虫けらたちも追い払ったことだし――」 「――いざ、ゲームを始めてみようじゃないか!!それじゃあ……彼らの案内役は頼んだよ……俺の最高傑作のリビングドールちゃんたち!!ん~……君たちは――せいぜい頑張って俺の元にたどり着いてね……いずれ俺の奴隷となるエルフちゃんたちと……かつては同じ世界にいた学生さん達♪」 三角屋根のてっぺんにあるチョコが半分かかった苺を模した装飾のスピーカーからけたたましく鳴り響いていた不快音はヴァンプモスキートとハニービーの群れが何処か遠くへと勢いよく飛び去っていき――完全に姿が消えたと確信した途端にピタリと鳴り止んだ。 すると、今度は先程まで僕らを苦しめ続け、けたたましく辺り一帯に鳴り響いていた不快音ではなく――おそらくスーツ姿の男の人の僅かに興奮気味で愉快げな声が呆然と立ち尽くしている僕らの耳を刺激してくる。 ――まるで、テレビゲームで遊ぶ子供のように無邪気で楽しげな声色だけれど、だからこそ先程のヴァンプモスキートとハニービーの鳴き声を聞いた時とは別の不快さを感じてしまうのだ。 【楽しさ】ゆえに悪戯感覚で僕らを苦しめるという点では――ヴァンプモスキートとハニービーに襲われた時よりもスーツ姿の男の人に対する不快さが勝ってしまうような気がした。 もしかしたら――スーツ姿の男の人にとっては、村のエルフ達やナギをさらって監禁している理由もテレビゲームで遊んでいるかのような軽い感覚なのかもしれない。 一度、頭の中でそう思ってしまうと――言い様のないモヤモヤとした怒りの感情が沸々と沸いてきてしまう。 【ほらほら、何をしているの……頼りないヘンゼルおにーさま!?マスターが彼らを案内しろとワタクシ達におっしゃったのよ……だから、ヘンゼルおにーさまが彼らを先導して案内してあげて……】 【ええっ……こういうのはグレーテル――キミの方が得意じゃないか!?それに塔の中には気味の悪いヤツラがウヨウヨいるから……ヘンゼル一人では嫌だよぉ……そうだ、ヘンゼルとグレーテル――二人で一緒にいけば解決するじゃないか……でも、何かあったら……グレーテルがヘンゼルを辺りを助けてね!?】 言い様のないモヤモヤとした怒りの感情に囚われていた僕だったが、ふいに隣から女の子と男の子の声が聞こえてきて思わずビクッと大きく体を震わせてしまった。 何故なら、その女の子の男の子は声を出してはいるけれど口元が全く動いておらず、それぞれが黒い糸で口全体をギザギザに縫い付けられ通常であれば目がある場所には大小二つの色ちがいのボタンが黒い糸で乱雑に縫い付けられている。所々、白い綿が飛び出しており――その髪の毛は二人とも金色の毛糸で出来ている古ぼけたドールらしき見た目なのだった。

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