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いざ、【捨てられしものたちの楽園】へ①

「ちょっ……ちょっと待て――何で……昔に捨てられた筈の人形が……こんな場所にいるんだ?お前らは……かつて幼い頃の俺が大事してたが……その後に父が捨てたはずっ……それなのに――どうして……っ……」 スーツ姿の男はリビングドールと呼んでいた――ヘンゼルとグレーテルというボロボロの人形たちが現れるまで、比較的冷静だった誠が急に動揺を隠せないといわんばかりに慌てふためきつつヘンゼルとグレーテルという呼び名の人形たちへと尋ねるのだ。 【あらあら~……あの無愛想なおにーさんは――そんな些細な事が気になるのかしら~?そんな事――この塔の中に入れば全てが明らかになるのに……ねえ、ヘンゼルお兄さまも、そう思うわよね?】 【え……ええっ……そ、そんな事って……この塔がどんな意味を持つのかってことかい?ああ――それならグレーテルの言う通り……この塔の中へ入れば分かるさ。だから、早く入りなよ……マスターのお客様がた。早くしないと、しびれを切らした誰かさんを……怒らせちゃうかもね~……あははっ……怖い、怖い!!】 ※ ※ ※ その後、ヘンゼルとグレーテルと呼ばれたボロボロの人形たちから案内されて僕ら一行は言い様のない不安を抱きつつも――ゆっくりとした足取りで慎重に塔の中へ入る。 ――バタンッ…… すると、僕ら全員が塔の中に入ったのを見透かしているかのように絶妙なタイミングで大きな音をたてつつ勝手に扉が閉まったのだ。塔の中は石鹸で出来た可愛らしいお菓子を模した外観とは違って暗くてジメジメしており、かろうじて何本か壁にかけられている蝋燭の炎で通路をボンヤリと照らしているようだ。 完全に閉じ込められてしまったと自覚し、途徹もない焦りを覚えつつ――こうなったからには引き返せないので、ひたすら前に進んでいくしかないのだ。 ――ズズンッ…… ――ズンッ…… ――ドスッ、ドシ………… それにしても、先程から何か得たいの知れない危険そうな足音が……僕らが歩いている場所から少し離れている方向から聞こえてくるような感覚に陥っているのは――果たして、僕が周囲を警戒して気にしすぎているせいだからなのだろうか?

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