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泥人形との戦い①

(――ゴーレムだ!!) その大きな黒い影が、僕ら全員からよく見える場所へゆっくりと移動すると――すぐに、謎の足音の正体である主がゴーレムだという事に気付いて息を飲み、恐怖からガタガタと身を震わせてしまう。 これまで、何度も魔物というダイイチキュウと呼ばれる前の世界にいなかった存在に遭遇し、仲間と共に戦ってきたとはいえ、この足音の正体である存在に対しては始末するのはこれまでのヤツラと比べても一筋縄じゃいかないと心の中で分かりきっていたせいだ。 何故なら、前にいた世界――ダイイチキュウのゲームの中で散々苦しめられてきた三面のボスである敵キャラが、今――目の前にいて僕らをこれから苦しめるであろう黒い影の主と瓜二つの容貌をしているから――。結局、僕と想太はゲームの中で三面キャラである【泥人形(ゴーレム)】を倒す事が出来なかった。そして、そのまま【ドランク・エルド】というゲームは放置され――その後、一度としてゲームを起動させる事はなかった。 ――人間よりも遥かに大きな体。 ――泥で作られたかのような焦げ茶色の体で、感情というものがないため、その表情は人形のように無表情だ。 ――人間でいうところの心臓がある場所には赤いルビーのような真っ赤な石が埋め込まれている。おそらく、あれが核(コア)と呼ばれるものだ。 『ゴーレム……泥と魔術で作られた人形で主人の命令を忠実に守る。体は人間よりも遥かに大きくて体の何処かにコアと呼ばれる弱点がある。よくゲームとかに出てくるけど――会ってみたいよね……主人の命令を忠実に守るなんて、すごく格好いいもん!!』 まさか、かつて幼い頃の想太が望んでいたこと――ゴーレムに会ってみたいという事が実際に僕の身に降りかかるなんて思ってもみなかった。 ――ズンッ…… ――ズズンッ…… ふと、過去の想太との思い出に浸りかけていて呆然としていた僕の方へゆっくりと――だが、確実にゴーレムが歩みを進めてくる。 「……ひっ…………!?」 間近で見るゴーレムの迫力に思わず、息を飲んてしまい情けなくも足をガクガクと震わせながら動けなくなってしまう僕。あまりにも、ゴーレムの体の多きさか現実離れしているせいだ。 しかし、てっきり――ゴーレムは僕に対して何か危害を加えると思っていたのだが、意外にもアッサリと僕から離れていってしまう。 「えっ…………!?」 自分でも驚いてしまいそうになるくらい間抜けな声が出てしまったが、ゴーレムが僕の方から離れて行った事に対して安堵したのも束の間――今度はミスト・誠・サン・引田(ライムス)の方へドシドシと重い足音を響かせながら順々に歩いてくる。 そして、最後に尚もドシドシと重い足音を立てながらゆっくりと誠の目の前へと歩み寄って行った時、それまでは割と大人しかったゴーレムの様子に異変が起きてしまうのだった。

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