「おい……木下誠――間抜け面晒してボーッとしてる場合じゃないだろっ……とりあえず、これでソイツを攻撃してみろ！！少しは――ダメージを与えられる筈だ……っ……！！」 と、ふいに――引田が物凄い素早さである場所へと駆けて行く。その、ある場所とは――恐らく以前にこの塔に招き入れられた者達が残していった武器や防具の残骸が乱雑に積み重ねられているゴミ山だ。引田は――先程から、しきりにそちらの方へと視線を向けていた。多分、使えそうな物があれば利用するつもりだったのだろう。 (そういえば……引田は――ダイイチキュウの学校ではバレー部に入ってたんだっけ……でも、その後に行方不明になって――それから、このミラージュに……飛ばされたんだ……) ふと、そんな過去の学校での事が――頭の中に浮かんだが、ハッと我にかえって僕はゴミ山の方へ素早く向かって行く引田をハラハラしながら見つめていた。 ――ｼｬｯ…… すると、引田がゴミ山の中から――かろうじてまだ使えそうな剣を見つけてきた。そして、その剣を突き飛ばされゴーレムに執拗に狙われている誠に向かってスライディングさせた。 慌てて、誠は引田が勢いよくスライディングさせてきた剣を何とか拾い上げ――手を震わせつつも目の前に立ちはだかるゴーレムへ向かって構える。 ――ｻﾞｼｭｯ……！！ 誠は怯えながらも、ゴーレムの腹の辺りへと剣を突き刺したのだ。 ――すると、その直後に信じられない事が起こる。 ゴーレムの動きがピタリと静止し――急に今までルビーのように赤く光っていた目が灰色へと変化すると、次第にゴーレムの姿かドロドロと溶けていき――、 「そ、そんなっ…………まさか、分裂するなんてっ……」 「ゴーレムが……段々増えていくよっ……ど、どうしようっ……やっぱり……ミストの魔法でやっつけるしかっ……ないよね……！？」 今まで一体しかいなかった筈のゴーレムが何体にも分裂していき――やがて、剣を構えて攻撃してから放心状態となっている誠と僕らの周りを一斉に取り囲んでしまうのだった。