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泥人形との戦い④

「なっ……何で――あんなに大きな図体だったゴーレムが……こんなに、たくさん……っ……でも、可愛い……可愛……い……か……わいい……」 「ヒ、ヒキタ……ッ…………!!?」 ――その引田の異変に真っ先に気付いたのは――ミストだった。 引田は誠へと、ゴミ山に乱雑に積まれていた剣を渡した後で自ら小さく複数に分裂したゴーレムの元へフラフラと歩み寄っていき――そのうちの一体を手に取ると、何を思ったのか小ゴーレムへ愛しげに頬擦りしたのだ。そして、その直後に何の前触れもなく自らの武器である短剣を懐から取り出してから誠へ向かって切りつけようとしてくるのだ。 よくよく見てみれば――引田の目が赤く充血し、その表情は怒りに満ちている。そして、誠へと短剣で切りつけようとする直前に彼が手に取って頬擦りした小ゴーレムが引田の耳元で何かをポツリと囁きかけるような素振りをしたのを僕は見ていたのだが、余りにも――あっという間の出来事でおかしくなってしまった引田を止める事が出来なかったのだった。 「ころ……してやるっ……にくい……にくい――ぼくの……優太くんを奪った……木下誠を……ころしてやるっ……!!」 「……くっ…………!?」 余りにも唐突に虚ろな表情を浮かべながらブツブツと呟きつつ正気を失っている引田が繰り出した短剣の攻撃を、つい先程――その張本人である引田から渡された剣を構えてギリギリの所で、どうにか受け止めた誠は――そのまま、どうにか弾き飛ばして難を逃れた。 しかし、混乱状態であり正気を失った今の引田から予想すら出来ない攻撃を仕掛けられたため――流石に無傷とはいかず、浅いとはいえ短剣で切りつけられてしまった誠の頬からツツーと赤い血が滲み出てしまい、そのまま床へとポタポタと伝っていってしまうのだった。

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