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操り人形との戦い①

「ユウタ……そっちは――危ないっ!!早く……そこから離れてっ……何かが変だ!!」 「……えっ…………うわっ……!?」 僕が急いで乱雑に積み重ねられている誰か捨てられたであろう人形の山へと走って行くと、尋常じゃない程に慌てふためいているミストの声が聞こえてくる。そして……何故、ミストが尋常じゃない程に驚いている声で僕へと忠告したのかという疑問は――その直後、身を持って理解する事となるのだ。 困惑しきっている僕らに立ちはだかるように目の前に重なり合っている誰かの手によって捨てられた哀れな人形の山が僕らと同じようにに意思を持っているかの如く、ゆっくりと動き始める。その動きは、さながら波の動きのようだ。そしてそれは、やがて最初は捨てられた哀れな人形たちの山だった物とは思えない程の姿へと徐々に――しかし、確実に変貌して行くのだ。 ――その姿は簡単に言ってしまえば【巨大な操り人形】 積み重なり合っていた複数の人形達が互いに結合――もしくは融合していき、僕ら人間やエルフ(スライムも含む)よりも明らかに背が高く巨大ではあるが、元のゴーレムとは違って割りと細身である【操り人形】が僕らの行く手を阻むようにして現れたのだ。 ――その顔は洋風の人形ではなく、雪のように白い顔に黒いおかっぱの肩くらいまでの髪の毛と紅い唇が特徴的ないわゆる日本人形だ。 ――その体は腕も足も全て木で出来ている。此処からでは良くは見えないのだが僕ら人間達の心臓がある筈の場所は白い糸が幾重にも絡み合っているかのように見える。 そして、その捨てられた哀れなる人形達が巨大な【操り人形】へと姿を変えていく様を恐る恐る横目でチラッと見つめてから、最初は人形の山があった場所から距離を取ると――そのまま何故かあれから一向に誠へ攻撃してこよういう素振りさえ見せずにゴーレムと同様に虚ろな表情を浮かべたままボーッと佇んでいる引田へと視線を向けた。 まるで、何者かからの命令を待っている――といわんばかりにゴーレムも様子が豹変した引田さえも、その場にボーッと佇んでいるだけなのだ。

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