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操り人形との戦い③
――バキッ……メキッ……
――メキッ……バキ、バキッ……
引田に強い力で押し倒され、身動きが取れなくなってしまった僕の耳に嫌でも入ってくる奇怪な音――。いや、他の仲間達の耳にも――まるで固い何かが徐々に壊れていってしまうような形容し難い奇怪なな音が聞こえている筈だ。
そして、その奇怪な音に引き寄せられるように僕を含めた仲間達は耳障りな謎の音よりも更に異様としか言いようがない【操り人形】の新たなる姿を目の当たりにする事となり、操られた状態のままである引田に押し倒され苦痛に顔を歪める僕も――それどころか、いつもは冷静厳しいエルフ達の纏め役であるサン、そして生真面目過ぎるガルフでさえも――絶句してしまうのだ。
その異様な新たな姿を一言で言い表すのであれば、巨大な蜘蛛――。
しかし、単なる蜘蛛ではない。
――顔の部分は、おかっぱ頭で赤い口紅が目立つ日本人形。
――複数ある脚はそれぞれが細長い棒状の木で出来ており、それを強引に折り曲げて本来の蜘蛛の脚のように見せている。強引に折り曲げてある部分は白い糸でグルグル巻きにして補強しているから容易に動かせるのだろう。あの白い糸はアラクネの糸と同等――もしくは、それ以上の耐久性と強靭さがありそうだ。
――不気味な雪のように白い日本人形の顔の真下の胴体部分には異常に膨れ上がっている腹がある。注意深く観察してみれば、それは先程までは――かろうじて人の形を保っていた【操り人形第一形態・人ノ形】の心臓付近にあった核であり――それは更に大きさを増して白い糸でグルグル巻きにされ守られているのだ。
やはり、あの白い糸で守られパンパンに膨れ上がっている腹の中にあるに違いない核――それこそが【操り人形第二形態・蜘蛛ノ形】の弱点なのだ――。
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