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操り人形との戦い⑤

――バシュッ……!! 尚も操られたまま混乱状態に陥っている引田によって強い力で首を絞められ続けたせいで流石に意識が朦朧としてきた時――サンが弓矢を放つ時の――独特な音が微かに僕の耳に届いてきた。 ――グサッ…… 「ぎ……っ…………!!?」 サンの容赦ない弓矢の攻撃は――僕の首を絞め続けたまま虚ろな表情を浮かべている引田の片腕に突き刺さった。操られた状態であるとはいえ、サンの容赦ない弓矢での攻撃は堪えたらしい。痛みは感じるせいか……一瞬、顔を苦しそうに歪めて咄嗟に片腕に刺さったままの矢を抜こうとする。そして、必然的に僕の首を絞めていた引田の腕が――するり、と離れるのだ。 「おい、何をボーッとしているんだっ!?今の内にヒキタというニンゲンから離れろっ……このドン臭が……っ……!!」 「……ご、ごめんなさいっ…………」 サンの言う通りだ――。 正気を失ったまま腕を負傷してしまった引田の事も心配だが、今は己の身を守るためにも――一旦、この引田の元から離れなければならないのだ。そう思い直すと、僕ら困惑しているせいで慌てながらも――この場から何とか離れるために一心不乱に駆け出すのだった。 ――ブッ…… ――ブッ……プッ…… すると、僕の行く手を阻むように【操り人形・蜘蛛ノ形】の大きく開かれた口から勢いよく何かが飛び出す。引田から離れようと一心不乱で駆け出す僕だけを狙って集中的に、その何か得たいの知れない物を吐き出してきたのだ。 「――ユウタ、止まって!!」 その直後、よほど切羽詰まっているのかミストの叫ぶかのような大声が聞こえてくる。そのため、僕は体をビクッと大きく震わせてから――反射的に足を止めた。 ――ドォォォンッ……!! ミストが叫ぶかのような大声をあげてまで――僕へ忠告してきたのが何故なのか分かった。 【操り人形・蜘蛛ノ形】の大きく開かれた醜い口の中から飛び出してきた物――おそらく、先程喰らったゴーレムの食べカスともいえる焦げ茶色の大小入り混じった欠片が急に爆発したからだ。 もしも、洞察力と判断力が仲間の中でも特に優れているミストが忠告していなかったら――僕はその爆発に巻き込まれて怪我――いや、最悪の場合死に至ったのかもしれないのだ。

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