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繭腹の中で、お眠りなさい①
――バキ……バキッ……
「……っ…………!?」
――ドサッ……!!
「……ユウタ……ユウタッ……!?」
「おいっ……しっかりしろっ――くそ、ミスト
……すぐに回復するんだっ……早くしろ!!」
周りでミストとサンが騒いでいるのが微かに聞こえてくる――。
それを聞きながら、僕は頭痛と目眩で支配されている頭の中で――ふと、きっと【操り人形・蜘蛛ノ形】の篠笛の音と口から発せられた風圧によって吹き飛ばされたせいで体を何処か固い所にぶつけ、そのまま呆気なく倒れてしまったんだな――と何となくだけれど思ってしまったのだ。
まるで、子供が興味本位で玩具を飛ばし壊れてしまった時のような愉快げな――それでいて、残酷で不気味な笑みを浮かべつつ、篠笛のように上品な音と尚且つ威力のある吹き飛ばし攻撃による風圧とで僕の体を飛ばした【操り人形・蜘蛛ノ形】と一瞬だけ目が合った――ような気がした。
(暖かい……みんなの――思いが暖かい……そうだ、どうして仲間を見捨てるなんて――バカな事を考えてしまったんだ……こんなにも僕を救おうと頑張ってくれているのに――仲間を見捨てるなんて――ダメだ、それだけは……絶対にダメだ……っ……)
ミストがグッタリしている僕を魔法で回復してくれている――。他の仲間達も、僕を救おうと無我夢中で駆け寄ってきてくれる。
時々、頭の中に浮かんでくる想太の助言があったからこそ今まで敵を倒して来れたし――ピンチを解決してこれたのだ。
――ブシュッ…………
――ビュッ……ヒュッ……!!
徐々に意識が鮮明になっていき――頭痛と目眩が緩和され始めていた時、妙な音が僕の耳へと入ってくるのだ。
そして、おそるおそる――目線を【操り人形・蜘蛛ノ形】へと向けてみる。すると、僕らの目に口を今までの大きさとは比較にならないくらいに最大限まで開き、負傷したせいで床にグッタリと横たわっているままの誠と引田の体へと自慢の白い糸をくっ付け――そのままグイッと引き寄せてから、まるで蛇が獲物を丸ごと飲み込もうとしているかのような【操り人形・蜘蛛ノ形】の異様な光景が飛び込んできてしまう。
それに、いち早く気付いたガルフさんが慌てて、敵のその行為を止めるべく【操り人形・蜘蛛ノ形】の方へと素早く走り寄る――が、
ガルフさんの勇気ある行動よりも――僅かに【操り人形・蜘蛛ノ形】の動きの方が素早かったのだ。
――ゴクンッ…………!!
一度、膨れあがっていた繭腹が風船のようにシューと萎んでから、ゴクン、と盛大に音を立てつつ誠と引田の体が繭腹の中へ丸ごと飲み込まれてしまった途端に――再び、繭腹がパンパンに膨れ上がる。しかも、二人の体が飲み込まれてしまう前よりも膨れ方が目に見えて大きくなっているのが分かる。
その異様で、おぞましいともいえる光景を否が応でも目の当たりにしてしまったせいで――僕は悟る。
誠と引田は――あの【操り人形・蜘蛛ノ形】に完全に飲み込まれてしまい、醜悪なる繭腹の中に閉じ込められてしまったのだと――。
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