(よし……これで何とか――外へ出られるくらいには広がった――後は……っ……) 真っ赤になりヒリヒリしてしまうものの、なんとか皮が剥けてベロベロにならずに済んだ事にホッと胸を撫で下ろしつつも一旦、裂け目から離れて避難させていた引田を探す。 穴が塞がってしまうかもしれないから早くしなくては――。 ――すると、 「おい、そんな所で這いつくばって――何をしているんだ！？もう、欠片は集め終わったんだろ？？この裂け目が塞がらないうちに……さっさとここから出るぞ――あと、外へ出た後で引田――お前にやってもらいたい事があるんだ」 「――木下誠、ぼくに――やってもらいたい事って何？わざわざ、ぼくに頼むんだから――下らないことだったら――許さないからね」 引田はゴーレムの残骸である大小様々な欠片以外にも――何かを拾ったようだった。そして、彼はその何かを俺へ見せないまま――腰に下げている黒いポーチの中へとしまうと尚も不貞腐れたような表情を浮かべながら俺へと振り返った。 (よほど、俺の事が気にくわないんだな――まあ、引田は優太の事が好きなんだから無理もないか……) と、思いつつも――引田よりも先に裂け目へと向かうために彼から背を向けて歩き始めた時だった。 ――ぐいっ……！！ 「う、うわっ…………！？」 「…………こ、これ……っ……巻いときなよ。そんな真っ赤になってる手……ぼくは見たくなんかないから！！」 後ろにいる引田から服の裾を掴まれ、変な声を出しつつ反射的に彼の方へと振り返ってしまう。そこには、尚も不貞腐れたような表情を浮かべながら――どこからか取り出した傷薬と包帯を持っている引田の姿があった。 「引田――ありがとうな」 「べっ……別に……仲間――なんだから礼なんていらないしっ……」 引田から受け取った包帯と傷薬で簡易的に火傷の手当てをすると、そのまま俺は僅かに表情が柔らいでいる引田へと――これから外へ出た後で行う作戦についてゴニョゴニョと耳打ちする。 「――じゃあ、外へ出たら……その作戦でいくぞ。引田……やっぱり――お前が先に出ろ……後は頼んだぞ？」 「――ふん……お前に指図されなくたって――ちゃんとやってやるよ……木下誠――お前こそヘマしないでよねっ……」 引田は俺に捨て台詞を吐いてから、火傷の処置をし終えた包帯と傷薬を大事そうに腰にぶら下げている黒いポーチへとしまうと、そのまま先程話し合った作戦通りに勢いよく裂け目へと走っていくのだった。