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【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】との戦い③

――ドクンッ……!! ――ドクン……ドクンッ!! その症状は天井に張り付き、粘液混じりの塊を顔へとかけられた直後に僕の体を襲ってきた。動悸があり――息も早くなる。一度、頭痛と目眩が収まり何とか立ち上がれたものの足がガクガクと震え――とてもじゃないが立っていられなくなり、その場に膝をついて屈んでしまう。 何よりも――体が燃えるように熱い。勿論、体の外側にも熱さは感じるのだが――内側の方が、その数倍も熱いと感じる。 ――ドサッ………… とうとう耐えきれず、床に横たわってしまうと――尚も内側から煮えたぎるかのような苦痛を感じて目に涙を浮かべつつ、両手で体を抱えるようにして出来る限り――この地獄のような苦しみから逃れようと試してみる。 ――少し離れた場所では、飛び道具が武器であるサンやガルフさんが未だに天井に張り付きながら二人に対して炎の息吐き攻撃を仕掛けてくる【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】に必死で立ち向かっているのが見える。 そして、二人の強さを信頼しているミスト・誠・引田・ライムスが急に床へと倒れてしまった僕に気付くと慌てて駆け寄ってくれた。 「ち、ちょっと……ユウタ……大丈夫!?え、体が熱い?う~ん、ミストは魔力を補充している最中だから、悪いけど回復魔法はかけられないな。と、とりあえず……この水でも飲んでみる?」 「優太……お前、さっき蜘蛛の化け物に塊をかけられた時に何か飲み込まなかったか?」 「こう言うのは癪だけと、ぼくも見たよ――木下誠。優太君の口に何かが入り込んだのを――もしかしたら、今の状態は――そのせいかも。あ、水を飲むのは待って。いい考えがあるんだ。おい、ライムス―――」 誠達が何かを話しているのは、朧気に理解できるものの、どんな内容なのかは流石に今の状態では理解できなかった。余りの熱さに、早く水が飲みたい――と、心の中で思った時、 ――フニッ ふいに僕の唇に何か軟らかい物が当たり―――そのまま、待ちに待った冷たい水が僕の喉を通っていく。 そして、僕が閉じていた目をそっとあけた時、そこには――僕が世界で一番愛する誠が優しく口移しで水を飲ませてくれていた事に気付くのだった。

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