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【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】の最後③

「だ、駄目だよ……ユウタ………… 火はつくけど完全には燃えきらない。多分、《炎よけ》の術がかけられてる。きっと、この塔を作ったあのニンゲンの男が……この画用紙が僕らの手によって燃やされないように、予め対策してたんだよ……ずる賢い、忌々しい奴。」 「何か、他にこの画用紙を使ってアイツにトドメをさす方法があれば―――いいのに。」 ミストがお手上げだよ、と言わんばかりに悔しげな表情を浮かべながら僕へと言う。それでも、わざわざライムスが己の身を犠牲にし、熱さに耐えてまで――この画用紙を取り返してくれたのだ。 このまま、何もせず諦める訳にはいかない――と頭の中で必死に方法を考えていた時、 『ひとつの方法だけを考えるんじゃなくて――別の見方をΘξ<φΘする―――』 『あの女の先生に……画用紙、捨てられちゃった。でも、やΘφ&φで良かった……』 小さい頃、想太が僕に言ってくれた言葉が浮かんできた。想太が女の先生に画用紙を捨てられ、落ち込んだ時に僕へ言っていた言葉……あれは、確か――。 そうだ、ようやく思い出した――。 あの時、想太が僕へと言っていた――ある言葉が【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】にトドメをさす最大のヒントだった。それを、確信した僕はライターで炎をつけて燃やそうと試みたが何の成果もなく床に落ちた画用紙を拾うと、それを手に持ち――そして、若干の戸惑いはあったものの覚悟を決めてから、画用紙をビリビリと破いたのだった。 ドスッ……!! ドスッ……ドス……!! 【ぎっ……ぎゃぁぁぁぁぁっ……!!】 僕がビリビリと画用紙を跡形もなく破ると、信じられない事に、ヒラヒラと床に舞い落ちていく画用紙の破片が床に落ちる直前に色とりどりの《色鉛筆》へと姿を変え――まるで刃物ように鋭い《色鉛筆》の先端が動きを止めたままの【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】へと向けられた。 【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】の苦しげな悲鳴が辺りに響き渡り、その余りの大きさに思わず僕らは耳を塞いでしまった。 【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】が、けたたましい悲鳴をあげるのも無理はないと思う。何故なら、元は画用紙の破片だった筈の大小様々で何本もある《色鉛筆》がヤツの体を串刺しにしたのだ。 ヒラッ…… ヒラ、ヒラッ…… そして――苦しげに顔を歪めつつ、呻き声をあげていた【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】は先程までいたのが、まるで嘘だったとでもいうように跡形もなく姿を消し去ってしまったのだった。 【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】が姿を消し去ったものの、ついさっきまで体を串刺しにしていた筈の《色鉛筆》は再び、画用紙の破片となり――今度こそ、床に落ちた。しかし、その画用紙の破片も暫くすると炎があがり、最終的には燃え尽きてしまうのだった。

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