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束の間の休息①

※ ※ ※ 「よし、今夜は此処で休む事にしよう。多分、さっきのアラクネの言葉からすると、今日は――もう敵を使って僕らを攻撃をしてくる事はない筈……」 「う、うん…………そうだね、ミスト。でも、何で敵であるアラクネが僕らの元に来たんだろう……本当は悪い子じゃないのかな……?」 ミストが言う通り、【操り人形たち】を倒した後、疲弊感と喜びにわく僕らの元に敵の大元であるスーツ姿の男がしんらいを寄せている部下・アラクネが来たのだ。 ――そして、 【まずは――操り人形たちのフロア突破、おめでとう!!中々、やるじゃない。そんな貴方達にリッくんから伝言があるわよ!!え~と、《今夜はゆっくり、お休み――寝首をかくような卑怯な真似はしないから安心してね♪》ですってっ!!流石、愛しのリッくん――敵に対しても優しいんだからっ――それじゃあ、また後でね~♪】 予想だにしなかった、突然のアラクネの来訪に呆然とした表情を浮かべた僕らに対して、どことなくハイテンションな様子でスーツ姿の男からの伝言を教えてくれたのだった。 「まあ、でも――とりあえずミストの魔力も回復させなくちゃいけないし、皆だって体を休めなくちゃ。それに、色々と集めなくちゃいけないものもあるよ?例えば、回復草とか。はあ、ミスト達が欲しい物を出してくれるような道具が欲しいよ。まあ、とにかく一旦――体を休めて次なる戦いに備えないとだね」 「そうそう……ミスト様の言う通り体を休めないと。さっき、向こうから水の音がするから見てきたら《温泉》があったんだ――順番に入ろうよ。ぼくとしては、優太君と二人きりで……っ……」 ――グイッ!! 「優太、いつまでも顔が汚れたままだと気持ち悪いだろう?俺と一緒に、その《温泉》とやらに入るぞ……っ……」 「わ……分かったよ、誠――」 引田が《温泉》が近くにあるという事を教えてくれていた途中で、誠から腕を引き寄せられ――僕は顔が【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】から放たれた子蜘蛛の白いネバネバした粘液で汚れていた事を思い出す。 誠と二人きりで《温泉》に入るのは、以前にティーナさんの酒場がある海辺の村でも似たようなシチュエーションがあったとはいえ、慣れる筈もなく――頬を真っ赤に染めながら、こくりと頷くのだった。

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