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束の間の休息③
「誠、あっちにも違う種類の《温泉》があるよ!!ち、ちょっとさ……行ってみない?」
「ああ―――そうだな」
急に人が変わったかのように乱暴になった誠の気を引くために、僕は辺りを見渡してみる。すると、今いる緑がかった色をして何か変な物がプカプカと浮いている《温泉》から少し離れた場所に、前に暮らしていた世界でいうところの《砂風呂》に似たものがある事に気付いた。
その《砂風呂》の隣には小さめな文字で説明文が書かれている。
《爆発岩風呂》➡効能は疲労感の回復、それと美容。【爆発岩】を細かく砕いた砂から出来ている風呂。体を芯から温めると共に、保湿性もあるため女性にも人気があります。【爆発岩砂風呂】から、あがった後のマッサージも疲労感回復にお勧め♪是非、お試しください!!
その看板を見て、尚も興味を抱いた僕は誠の手を引いて――そのまま、《爆発岩風呂》の方へと行くと、二人で共に《爆発岩》を細かく砕き、山積みになった爆発砂の中へ、うつ伏せになり全身を埋めた。
―――とても、温かい。
確かに、あの看板に書かれていたように体が芯から温たまり――余りの気持ちよさから思わずトロ~ンとした表情を浮かべてしまう。隣にいる誠も同じような顔つきをしていたため、愉快になり、僕はクスッと笑ってしまったのだった。
※ ※ ※
「ふ~……気持ち良かったね。それでさ――あのね、誠に――お願いがあるんだけど聞いてもらってもいいかな?」
「お願いって、何だ?焦らさずに言ってみろ」
《爆発岩砂風呂》からあがり、側にあるあがり湯専用の綺麗なお湯で体を洗いながら、僕は隣で黙々と体を洗っている誠へと勇気を出して尋ねてみる。
「あのね、その……僕に誠の体をマッサージさせて欲しいんだ。前の世界では色々あって――それは叶わなかったから。だから、もしも、誠さえ良ければ……っ…………」
「…………好きにしろ。俺は、お前だったら……嫌じゃない」
「ま、誠……痛かったら――ごめんね!!」
――ドサッ……
そう答えてくれた誠の言葉が嬉しすぎて、僕は思わず――体を洗い続けていた誠の体を自分から床へと押し倒してしまうのだった。以前の僕であれば、自らが誠の体を押し倒すなど、考えられない事だった。
「ただし、痛くはするなよ…………優太」
「う、うん。ありがとう、誠……精一杯、マッサージするからね。じゃあ、まずは――全身を揉むよ?」
そう言うと、僕は《爆発砂浜風呂後のマッサージ専用!!》と書かれて石鹸いれに置かれていた、何かトロッとした柔らかい物を手に取る。
そしてそのまま、その柔らかい物を仰向けになっている誠の肌へと塗り込むように、優しすぎず――かといって強くし過ぎないように揉んでいくのだった。
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