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朝――そして、謎の宝箱② ※引田視点

※ ※ ※ ああ、朝から最悪な気分だ――。 木下誠め――あいつ、優太くんの手を固く握りながら幸せそうに眠りこけていやがって――。 ぼくが、いくら――ミスト様の事を好きになりかけてきているという事を自覚し始めているからといって――まだ、完全に優太くんを好きだという気持ちが覚めている訳ではないっていうのに。 優太くんには申し訳ないが、そんな二人の様子を見たくなかった。だから、ぼくは『これから行く道に敵がいないかどうかライムスと一緒に見てくる。他の皆は優太くんと………木下誠を起こしておいて……』と既に目を覚ましていた仲間へと告げたのだ。 『だ、大丈夫ですか……ご主人様?何だか……切なそうです……どうすればご主人様を慰める事が出来ますか……?』 「…………ライムス、お前――優太くんの姿に変身するのは止めろ。普段ならまだしも……今は止めてくれ。ぼくが優太くんをどう思っているのか……お前だって知ってるだろっ!!」 心の中で必死に自分の醜い気持ちを整理しながら、うす暗い石造りの通路をライムスと共に歩く。しかし、どうしてもこの醜い気持ちを消せる事が出来ない。それどころか、ぼくを励ますため、優太くんの姿に変身していたスライムのライムスにまで慰められる始末だ。 そして、最悪な事に――何も悪くないライムスにまで八つ当たりしてしまう。 「………………くそっ!!」 ――ガッ!! ぼくを励まそうとしてくれていたライムスにまで八つ当たりしてしまった自分にイライラしながら、地面に転がっていた石ころを蹴り飛ばす。 「ドッカァァァァン!!汝の望みは何ぞや!?我に申してみるがよい!!」 すると、ふざけた台詞を言いながら、そこら辺に置いてあった宝石が施された赤い宝箱の中から、今までに見たことがないような美少年が飛び出して――あろう事か、勢いよく傷心に浸る、ぼくへと飛び付くように抱きついてきたのだった。

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