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朝――そして、謎の宝箱③

※ ※ ※ 「――ということで、ぼくも何が何だか分からない状況なんだよ……っていうか、《ミミック坊や》って何なんですか――ミスト様?《ミミック》なら、聞いた事がありますし、ゲームでもよく見ますけど――。」 「《ミミック》と《ミミック坊や》は呼び名も見た目も似てるけど――完全に別の魔物だよ。《ミミック》は宝箱に擬態し、人間や他の種族を襲って食べるけれど《ミミック坊や》は、どちらかというと人間や他の種族に対して好意的なんだ。まあ、宝箱に擬態するという点に関しては同じだけどね。でも、まあ――《ミミック坊や》は自分の気に入った人の願いを読みとって叶えてくれるみたいだから……引田にとっては良かったんじゃないの?」 引田が《ミミック坊や》という宝箱から飛び出した魔物(ミスト曰く)に出会った経緯を話した後、今度はミストが《ミミック坊や》の特徴について丁寧に説明してくれた。 「ぼくの……願い?それなら、もう決まってる!!木下誠じゃなく、ぼくが優太くんと付き合えますように……っ……!!さあ、これが、ぼくの願いだ」 「えっ…………そ、そんな事……願われても困るよ……引田!!願いは、取り下げてよ……お願いだからっ……」 「――残念だったな、ヒキタ。この忌々しい《ミミック坊や》とやらは、本当に叶えられるという見込みがある願いしか叶えられないらしい。つまり、現実的な願い事しか叶えられない、という事だな。それに、ミストが物凄い顔で貴様を睨み付けてるぞ?」 引田から思いがけない願い事を叫ばれ、困惑した表情を浮かべながら、必死に願いを取り下げてくれるように説得する僕だったが、ふいに引田へとかけられた冷静なサンの声を聞いて安堵してしまうのだった。

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