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囚われの人間たちの正体①
※ ※ ※
――ギイッ……
《ミミック坊や》の説明を聞いた途端、戸惑いもなくズカズカと先に進み始めるサンとガルフの後から順に続いて歩いて行った僕らは暫く歩みを進めて行くと古い木の扉を見つけた。
そして、扉を開けた僕らの目に飛び込んできたのは明かりが一切付いていない闇に包まれた室内だった。すると、ミストが杖を取りだし――短めの魔法を唱えると、杖の先が青白く光り、辺りを照らし始めた。ミスト曰く、それは発光属性・下位魔法の《シト・モビの魔法》という呼び名があるらしい。
発光属性・上位魔法よりは光の威力は少ないけど、とりあえずこれで勘弁して、と僕の後ろを歩いていたミストがコソッと耳打ちしてきたため、僕は少しだけ安堵して思わず微笑んでしまった。
「よし、これでとりあえず部屋の中を確認出来るまでには明るくなったね。それにしても……なんか変だと思わない?」
「ああ………ミストが言うように、俺も何かが変だと先程から感じていた。《ミミック坊や》とかいう宝箱が言うには、この部屋から泣き喚くニンゲン達の声が聞こえていたとの話しだが、そんな声――全く聞こえないじゃないか。やっぱり、俺達は騙されてっ…………!?」
「ね、ねえ……あそこに誰かいるよ――ミスト様、あそこを照らしてみて下さいっ!!」
ピカッ……!!
誠とミストが真剣な様子で互いに話し合っていると、唐突に慌てふためき、怯えるような様子で、とある箇所を指差した引田の声が響く。そして、怯えきった様子の引田に言われた箇所をミストが照らす。
――すると、
「あ、あのっ……お願いです――どうか助けてくださいっ!!私達、此処に閉じ込められているんですっ……」
以前、僕と誠――それに、引田が暮らしていたダイイチキュウという世界で通学途中によく見かけていた胸元に藤色のリボンが付いているセーラー服を着た、腰くらいまである黒髪の可憐な女の子が涙ぐみながら必死に僕らへと懇願してきたのだった。
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