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囚われの人間たちの正体②
「ち、ちょっと待って!?ねえ、優太くん……この制服って聖・クロリア高等学校のじゃない?確か、キリスト教の授業を熱心に取り入れてるので有名な――。でも、どうして君だけ……こんな場所に囚われてるの?《ミミック坊や》の話だと、大勢のニンゲン達が閉じ込められてるって話だけど?」
「そ、それは……っ……周りを……周りをよく……見てみてくださいっ……お願いします!!」
ーー気付かなかった。
そのセーラー服の女の子の悲痛な訴えを聞くまで、僕らは誰一人として周りに大勢のニンゲン達がいるという事に気付かなかった。よくよく注意深く見てみると、そのニンゲン達はセーラー服の女の子を取り囲むようにして、ぐったりと倒れ込んでいる。しかも、ざっと辺りを見渡してみるだけでもーーかなりの人数のニンゲン達が倒れており、ぴくりとも動かないのだ。
それに、ぐったりと倒れているニンゲン達の中には、女の子のようにセーラー服や学生服を着ている者もいれば、アニメや漫画に出てくるようなキャラクターのコスプレをしている者もいた。
中には、僕と想太が幼い頃に夢中になって見ていたアニメのヒーロー役のコスプレをしている者・僕達が暮らしてた前の世界で流行っていたアニメの主人公の敵である殺人ピエロのコスプレをしている者・僕とミストとライムスが今着ている《魔法少女・アイドルーナ》のコスプレしている者がいる事まで分かった。
「私達は修学旅行で……とある遊園地に行く筈だったんです。でも、バスの中で突然、眩しい光と濃霧に包まれて……気づいたら、バスに乗ってた全員が此処にいたんです。でも、ここに閉じ込められてから最初の方は皆……気絶なんてしてなくて、悲しくて怖くて泣いてばかりだったんですけど――さっき突然、この部屋が濃霧に包まれて……私と彼以外、全員が気絶してしまって……」
「――彼?彼とは一体、誰の事だ?ゆっくりで構わないから話してみろ。」
相変わらず戸惑いを隠しきれず、不安から声を振るわせながらセーラー服の女の子は理不尽に此処に閉じ込められた経緯を説明してくれた。すると、今まで黙り込んでいたサンが女の子へと尋ねる。
「その――私の幼なじみでクラスメイトでもある人の事です。此処に閉じ込められて濃霧に包まれた時、他の人達は一斉に気絶してしまったんですけど、私と彼だけは気絶しなかったんで安堵してたら、急に向こうの方から誰かが現れて――彼だけを連れ去って行ってしまったんです。お願いします、私じゃ何も出来ないので――向こうに行って彼を助けに行って貰えませんか?」
尚も悲痛な表情を浮かべながら訴えてくるセーラー服の女の子が指差した方を見てみる。そこには古ぼけた木の扉があった。すると、その木の扉には――まるで血のように真っ赤な文字で【➡コッチ】と書かれていて、とても嫌な予感がした。
しかし、閉じ込められてる前の世界から来た女の子――ぐったりと倒れている人達――そして、女の子の恋人だという少年を見捨てる訳にはいかない僕らは各々不安を感じつつも【➡コッチ】と書かれている木の扉の方へと歩みを進めるのだった。
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