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離ればなれ①
「…………ぐっ……ううっ……!?」
誠の声に気をとられ――それを見計らったかのように赤頭巾人形が自らの両腕で僕の首をぎりぎり、と音がしそうなくらい力強く締め上げる。そして、赤頭巾人形は僕の首を両腕で締めたまま――自らの頭の上方へと両腕をあげていき、そして急に僕の首を締め上げてた両腕の力をゆるめたのだ。
「……ま、誠っ……みんなっ………!!?」
急に両腕をゆるめられた事で、僕の体は赤頭巾人形の頭の方――いや、正確には全体を覆い尽くす程の真っ暗な黒い穴があいている顔の方へと落ちていき――そのまま、為す術なく本来ならば赤頭巾人形の顔がある筈の深い穴へと吸い込まれるかのように飲み込まれてしまうのだった。
――そして、赤頭巾人形は優太が飲み込まれてしまった事で、慌てふためく誠の方へと向きを変える。
「ゆ、優太……優太っ……大丈夫か………っ……!?」
【not enough……not enough…………not enough……(足りない)】
ふいに、顔は黒い穴に―覆われてしまっている筈の赤頭巾人形から、まるで小鳥のように美しい女性の声が聞こえてくる。
そして、お腹のすいた赤頭巾人形は、先程飲み込んだ優太だけでは足りないといわんばかりに尚も動揺している誠へと目をつけ、黒い穴に覆われてしまっている顔以外は可憐な赤ずきんの少女という見た目とは裏腹な怪力で誠の首根っこを掴むと――またしても、優太同様に黒い穴へと誠を飲み込むのだった。
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