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【夢見がちな女の子】と観覧車③ ※ミスト・引田side

【ねえ、おにいさん――おにいさんの行きたい世界って、どんな世界?この窓の外に映ってる世界?あなたを――辛い目にあわせる――この醜い世界?だって、ほら――】 窓の外一面に映る前の世界の学校を呆然と見渡していた引田に、【夢見がちな女の子】は外側にトランプ柄が描かれた自分用のコップに口を付け、優雅にお茶を飲みながら尚も楽しげな様子で尋ねてくる。 ーーはくしょんっ!! 先程から何故か鼻がムズムズしていた引田は窓の外の風景が前にいた世界の学校であるという事実を受け入れられず、驚愕し――言葉を失いながらも、とうとう余りのむず痒さに堪えきれずに、くしゃみをしてしまった。 己が問いかけた言葉に答える事なく、耐えきれずにくしゃみをしてしまった引田を【夢見がちな女の子】は更に愉快そうにクスクスと笑いながら穴があいてしまう程に見つめてくる。 『…………引田、お前なんて……ねばいいんだよ。これ以上、俺たちの優太に……近づくんじゃねえ。この、ストーカー野郎が!!』 『まあ、また――あの豚みてえな変態教師にセクハラされてえんだったら話は別だけどな。引田、てめえみたいな変態野郎にはな――男好きで自分の生徒にも手を出すような変態教師がお似合いなんだっつーの!!』 『なあ、引田――お前、あの変態豚教師にケツやこのビンビンに勃起してる淫乱乳首を撫で回されて気持ちよかったのか?おら、どうなんだよっ……!?』 「や…………止めろ……止めろっ……お願いだから……止めてくれっ!!」 引田は思わず耳をふさぎ――油断していると、すぐにでも出てきてしまいそうになる涙を必死で堪えようとする。その結果、辺りに響き渡る程の大声を出して叫んでしまう。 【おにいさん、大丈夫?顔が真っ青になってるわ――ねえ、平気よ……平気になるから……このお茶を飲んで?そうよね、うさぎさん?】 【yes,Alice…………yes,Alice…………】 ふと、窓の外の学校の景色の方から引田の耳に、あの悪魔のような輩たちの声が入ってくる。そして、引田は目に涙をためて必死で叫び――引田が以前の世界にいた悪魔たちの声は――ぴたり、と止んだ。 もはや、今の引田の耳に【夢見がちな女の子】とピンクのうさぎの着ぐるみの愉快げな声など入ってきてはいなかった。 しかし、【夢見がちな女の子】はガタガタと身を震わす引田の側へゆっくりと歩み寄ると――そのまま小刻みに震えている引田の手を優しくとって、甘い薔薇の香りがするお茶が入った温かいお茶のコップを持たせたのだった。

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