243 / 713
【ネムラ】の世界② ※ミスト・引田side
すると、今まで薄暗かった辺りが急に明るくなり――引田は反射的に上の方を見上げた。そこには、少し大きめの卵型のランタンがぶらさがっており、ミストから話しだけ聞いていたのだが――かつて優太達が遭遇した《ジャック・オ・ランタン》の光のように青白く光っていた。
そして、そのおかげというのも引田としては複雑な気分なのだが、暗さから解放され段々と目が慣れてきたおかげで辺りに――どのような光景が広がっているのかが何となくだが分かってくる。
体育館の上の方から【Everlasting love(永遠の愛)】【Eternal happiness(永遠の幸せ】【Vow eternal(永遠の誓い)】という文字が書かれた白い布が沢山垂れ下がっている。
色とりどりの風船や花で飾りあげ、隅に黒いグランドピアノが置いてある一際、明るく光り輝く檀上。
引田達が歩いていくのを両横で拍手をしながら祝福している――まるでマネキンのように顔がない大勢の人々。よく見るとマネキンのような奴等が座っているのは――前の世界に存在していたパイプ椅子だ。
引田達が歩く足元に敷かれている血のように真っ赤な絨毯。
――そして、引田と手を繋ぎながら歩く今までは顔が分からなかった隣の人物。
その隣の人物の顔――が辺りが明るくなったせいで、はっきりと引田の目に映る。
その隣の人物の顔が―――辺りが明るくなったせいで、はっきりと引田の目に映る。
かつて、引田に優しく笑みを浮かべていた時そのものの――幸せそうな優太の顔だったのだ。しかも、引田の手を繋ぎながら幸せそうに笑いかけてくる優太は雪のように美しい純白のウェディングドレスを着てきたのだった。
ともだちにシェアしよう!