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【ネムラ】の世界④ ※ミスト・引田side
心の中をドス黒い気持ちに支配されたまま隣にいる優太らしき人物と手を繋ぎながら檀上に登る寸前に、何処かからミストの切なげな声が聞こえてきたため、引田は慌てて――ミストの声が聞こえてくる方へと振り向いた。
すると、先程までパイプ椅子に座りながら引田と隣にいる優太らしき人物を祝福していたマネキンのような不気味な奴等に囲まれ――うつ伏せになりつつ、檀上に登ろうとしている引田を阻止するためか、必死で手を伸ばしながら檀上に登るのは止めて――と呟いていた。
【××××××××××××!!】
ふいに、うつ伏せになりつつ檀上へと登ろうとしている引田を阻止するため小声で訴えかけているミストを、邪魔だ――と言わんばかりに周りを取り囲んでいるマネキンのような奴等がよってたかってミストに向かって謎の言葉を言い放ってきた。何を言っているのかまでは引田は分からなかったが、ただ何となく怒っている、ということは分かった。
しかし、そのような状況でもミストを一方的に責めるマネキンのような奴等は表情を一切顔に現さない。
【――どうしたの?早く僕と一緒に檀上にあがって、牧師さんに永遠の愛の言葉を唱えようよ。そうすれば、引田くんは苦しみから解放されるよ――そして、永遠に僕と一緒のまま。嬉しいでしょ、幸せでしょ?】
「で、でも……ミストが……っ――あんなに苦しそうにっ……」
【ああ、ミストなら大丈夫だよ。みんなが可愛がってくれる。だから心配しないで……きっとみんながミストを気持ちよくさせてくれるよ――さあ、檀上へ――】
「…………」
そして、とうとう引田は優太らしき人物と共に檀上へと登った。
檀上の右端には銀色のナイフが突き刺さった白いウェディングケーキ。おそらくだが砂糖菓子で作った水色の薔薇がケーキの周りに飾られている――。
中央部分には笑顔で拍手をしながら引田達を迎える緑色の帽子を被った牧師。その表情は黒い仮面で覆われていて分からなかったが、引田と優太らしき人物を祝福しているのだ、という事は拍手をしている事から悟った――。
左端には先程までクラシック音楽を奏でていた大きくて真っ黒いグランドピアノ――。
【オフタリさん――オフタリさん、エイエンの愛ヲ誓ウ前に、ケーキにナイフカット……ケーキにナイフカット……ケーキにナイフカット……ヒャハハハッ――!!】
緑色の帽子を被った牧師が急に機械のように甲高く、またハイテンションな様子で愉快そうに引田と優太らしき人物へと話しかけてきたため、引田はビクッと身を振るわせ驚いてしまうのだった。
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