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【マイ蛾】の襲来② ※ミスト・引田side
「ああ、確かにキミは可愛い。それは認めるよ――でもね……」
【…………っ!?】
「だからって、この偽物の世界の中――大事な仲間を見捨てて呑気に眠っている程、ぼくは馬鹿じゃないんだよ。キミは可愛いかもしれないけど、ぼくを怒らせすぎた。ぼくと大事な仲間達を舐めすぎ!!」
ボゥッ……
引田は以前、【操り人形・女郎蜘蛛ノ形】と戦った時に誠から一時的に預かっていたライターを取り出すと、火のついたそれをネムラへと突き付けながら低い声で囁く。
そして、そのまま――今度は火がついたままのライターを上の方へと掲げながら淡々と低い声のままネムラへと言い放ったのだ。
「このまま、この鬱陶しく周りを飛び交う蛾たちもろとも燃やされたくなければ――早くミストがいる場所へ連れていくことだね。言っておくけど――ぼくは本気だよ?」
【…………っ……ネムラとネムロのベイビー達に何するつもりっ……!?分かった……分かったよ……あの耳長のおにいちゃんとネムロがいる所に連れてけばいいんでしょ!?その代わり、ベイビー達を傷つけるのはネムラだって許さない。その火を消さなきゃ連れていかないよ?】
とりあえず、引田は【ネムラ】に言われた通り――渋々ながらもライターの火を消した。だが、いつ何時――非常事態が起こっても対処できるようにライター自体は手に持ったままだ。
【あ~あ、しくじっちゃったな……ネムロに怒られちゃう。まあ、でも――どうせ愛しいおにいちゃんは【ネムロの世界】で、いたぶられてズタズタにされて耳長おにいちゃん共々――ネムラとネムロの物になるんだ。楽しみにしてるね、愛しいおにいちゃん♪】
「キミさ……顔や姿は可愛いかもしれないけど、うるさいよ?ぼくはね、口やかましいヤツと生意気なヤツは――大嫌いなんだよ。そこんとこ、覚えておいた方がいいよ……」
ニッコリと可愛らしい笑顔を浮かべつつ、耳元で少し色っぽく囁くと――そのままネムラは引田の体を抱き締めたまま、外に黒い光景が広がっている窓の方へと移動する。
そして、そのまま――引田はネムラに窓から黒い光景が広がっている外へと放り投げられてしまうかのように結構な勢いで突飛ばされ――為す術なく、引田は奈落へと落ちてゆくのだった。
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