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【ネムロ】の世界① ※ミスト・引田side
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(ここは…………どこなんだろう?こんな場所……ミストの記憶にはないよ。それに、引田達は……今どこにいるんだろう。さっきから……あの扉の方に何度も行っても、強引に弾かれて引き戻されちゃう…………)
ミストが気付いた時には他の仲間はいなく、ただひとり――この異様な光景が広がっている《世界》を、ひたすらにさ迷い歩いていた。
最初にミストがさ迷った《世界》は優太達と仲間になってから久しく立ち寄っていない《栄華を極めた王宮の世界》だった。
今のように王が病に伏せてはおらず、病のせいで自分を含めて周りの者達に八つ当たりするような醜い王のいなかった昔の《夢のような王宮の世界》だった。
ミストはかつて王に救われたのだ――。
今は昔よりも酷くはないのかもしれないが、王とミストが出会った時には《エルフ狩り》と呼ばれる行為が日常茶飯事で起きていた。エルフの涙は不老不死の効果があるとニンゲン達や他の種族の者達は思い込み――そして、エルフ達を狩っていった。
ミストは元々は名前も分からないニンゲンの奴隷になる――はずだった。しかし、それを今の王が救ってくれた。そして、己の護衛として雇ってくれたのだ。
現王の昔の優しく思いやりに溢れた姿を思い出し――ミストは深いショックを受けた。シリカ様がオークやゴブリンを嫌うのも、ミスト・サン・ナギ以外のエルフ達が嫌うのも、すべては病にかかって昔の優しさをなくしてしまった現王による残酷な命令のせいだ。
以前の――ミストと出会った頃の思いやりに満ちた王ならば絶対にそんな事はしない筈だと確信していたのに、その王の差をこの《世界》に来てから思い知らされたのだ。
※ ※ ※
【どうダーー?かつての王との差を思い知らされーーどんな気分ダ?ネムロに教えてくれないカ?ああ、その前にアカリをつけるカ。そうしないと、絶望にまみれたキサマの顔がーー見られないからナ?】
ふいに後ろから男の声が聞こえるとミストはビクッと体を震わせて、そちらへと振り返った。しかし、辺りが真っ暗なため目を凝らしてみても、その人物の姿が分からない。
そのミストの気持ちを嘲笑うかのように、急に辺りが明るくなった。急に灯りがついた眩しさからミストは思わず目を瞑ってしまう。そして、ゆっくりと目を開けた時――ミストは、いつのまにか前方に来ていた奇妙な男の姿を目の当たりにするのだった。
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