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【ネムロ】の世界③ ※ミスト・引田side

【さあ、ミスト――彼女の前へ。そして身をかがめて恭しくお辞儀をするんだ。何せ――彼女はこの国を統べる女王なのだから。彼女の前では、かつては勇ましく威厳に満ちていた王も――ほら、この有り様だ――存在価値のなくなった王はこの国から消えるべきだ。】 【よく見てみろ――かつては尊敬できた王の有り様を。ミスト――お前もこうなりたくなければ、俺の期待を裏切るな。この俺から逃げ切れると思うな。そして、お前にとっての全ては――この俺との永遠の愛を成就させること。つまり、この《結婚式》を最後までやりとげることだ】 ゴロッ…… ゴロ、ゴロッ……ゴトッ――!! ふいに、ミストは己の手をとった【誠】の言うとおりに《女王》と呼ばれた存在へ頭を下げつつ身をかがめながらお辞儀をした後、自分の足元に何かが転がってきて――それが足に当たったという事に気が付いた。 そして、その転がってきた何かの正体に気付いたミストは余りの衝撃に言葉を失ってしまう。 それは――かつてミストを救ってくれた若い頃の王の首だった。だが、王の首から血が出ていない事から、先程の貴族人形のように《ド・ネ・ドネーン》から出来た物だと頭の中では理解した。 しかし、いくら《ド・ネ・ドネーン》から出来た作り物の王の首だと分かってはいても、その今にも悲鳴をあげそうな程の苦悶の表情を浮かべた《王の首》を目の当たりにしたミストは困惑しながら――目の前にいる氷のように冷たく己に微笑みかけている《ド・ネ・ドネーン》で出来た等身大の作り物の《女王》をおそるおそる見上げる事しか出来ないのだった。

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