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【ネムロ】の世界⑨ ※ミスト・引田side

「………な、何で…………観覧車にいた筈のあの子達が……!?まさか、お前が……この化け物じみた馬に……食わせたのか?」 【はっ…………化け物じみた馬とは心外だな。これはオレの可愛い可愛い従者で、てめえらみたいな愚かなニンゲン共には分からねえだろうが――《ジャバッキー》っていう名前があるんだよっ!!】 【ブルルルッ………グルルッ…………】 思わず呟いた引田の言葉へ答えるように【ネムロ】が忌々しそうに言い放つ。すると、【ジャバッキー】と呼ばれた馬の化け物は己の背中に乗ってきた【ネムロ】の姿を見ると、汚ならしい歯を剥き出しにして口角をあげるような仕草をした。 まるで、笑みを浮かべているように見えたのだが――それは微笑ましいものではなく、邪悪な笑みだ。 【大体、あの空想しか信じない夢見がちな女と醜い身なりをしてるウサギの着ぐるみがオレの仲間だって!?そんな訳ねえだろうが!!あいつらは単なる駒でしかない。このオレが仲間と認めているのは、この【卵】と【ジャバッキー】と【ネムラ】だけだ。ああ、一応は――その【女王】もだな。】 ―――その時、言い様のない怒りの感情が引田の心を支配した。 【夢見がちな女の子】と【ピンクのウサギの着ぐるみ】は、これから仲間を救い――そして、先に進まなければならない引田達にとっては《敵》といえる存在だ。 しかし、だからといって――このような理不尽な目にあういわれは無い筈だ。少なくとも、【夢見がちな女の子】はあの観覧車の中では本当に幸せそうだったのだ。しかし、理不尽にその夢は奪われた――この【ネムロ】【ネムラ】という醜悪なる蛾達によって。 【それにしても、その耳長エルフの魔力――は素晴らしいな。きっと、ジャバッキーのご馳走となるに違いない。おい、ジャバッキー…………その耳長エルフを食ってもいいぞ。ただし、このニンゲンは邪魔だ。お前の部下を出してから――存分に味わえ。】 【ブルルルッ……グルルッ……グォォォォッ―――!!】 ―――ブッ ――ブッ――!! 【ジャバッキー】が【ネムロ】の命令の言葉を聞くや否や――美術室の中がビリビリと震動する程の大きな雄叫びをあげる。その雄叫びの威力に耐えきれなかった壁に掛けられている、かつての王と女王の絵画たちが苦悶の表情を浮かべつつ両手で耳を塞いだ。 無論、絵画たちだけではなく引田も余りの雄叫びの威力に耳を塞いだのだが、それよりも気になる事がふたつあった。 ―――ひとつめは【ネムロ】が【ジャバッキー】をけしかけて、ミストに危害を与えようとしている事だ。 ―――ふたつめは凄まじい雄叫びをあげ終えた【ジャバッキー】の口から何かが吐き出され、それが床に次々と落ちてゆく事だ。

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