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【ネムロ】の世界⑩ ※ミスト・引田side

―――それは、歯だった。 しかも、普通の健康な人間のような真っ白い歯だけではなく――中には所々、ヒビが入っていたり――赤黒く変色しているものもある。 (―――あの化け物じみた馬は何がしたいんだ!?自らの歯を、わざと地面に落として…………一体、何を企んでる……っ……) 引田がそう思った途端、ミストの顔が青ざめた事に気付いた。何かが――ミストの体にまとわりついている。 そして、その正体に引田が気付くまでに―――少し時間がかかってしまう。 【首を、はねよ――!!】 【その耳長エルフの魔力を吸収し、我々の力の糧とするには首と目玉だけで十分!!従順なる【邪歯ッ騎ー】の分身の兵士共よ――その者の首を奪うのだ!!】 ふと、先程まで《狂った結婚式》を祝福していた《作り物の女王》が今は、まるで醜い悪魔のような怒りの表情を浮かべつつ――地面に落ち、まるでチェスのポーンのような見た目になり、今は慌ててふためくミストに、しつこくまとわりついている《ジャバッキー》の歯達へと命令するのだった。

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