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【ネムロ】の世界からの脱出 ※ミスト・引田side

――バシャッ!! 「…………さあ、偽物だらけの化けモノ達……これでも、くらえばいいよっ!!この世界で重要なのは《美しい色》の筈だ―――さっき、そこのふざけた【卵】も汚い色を嫌っていたし、そこの【ネムロ】――君も、美しい色の羽を傷つけられるのを嫌がっていた。それは、醜い《色》によって汚されるのが嫌だったからでしょう?」 「さあ――夢のような、或いは魔法のような世界が消え去る時間だ。《Alice》、それに《ピンクのウサギさん》――君らは……ぼくらにとっては敵だったけれど、可哀想な存在でもあったし――出来れば、こんな結末は見たくなかった。せめて、安らかに……っ……」 引田は、密かに準備していた何色もの色が混じって汚くなったペンキを【ネムロ】と【作り物の女王】が急に奇声をあげた、壁にかかっている【かつての女王と王】の絵画へと目線を向けた隙に素早く【ネムロが手に持っている卵】へと勢いよくかけた。 ―――何故、そのような行動をしたのか、という事を呆然としつつも此方を睨み付けてきた【ネムロ】と【作り物の女王】を嘲笑うかのように説明する引田。 ――【作り物の女王】【ネムロが手に持っている卵】【ジャバッキーとその手下達】――そして、哀れにも餌となってしまった【Alice】【ピンクのウサギさん】は――そのまま、まるで蝋燭が炎の熱の熱さでドロドロに溶けていくような様子で、ゆっくりと――だが、確実に《ネムロの世界》から姿を消し去ってしまったのだ。 壁にかけられていた【かつての女王と王】の絵画は――急に発火した炎のせいで灰と化してしまい、ボロボロとその残骸が落ちるだけになってしまった。 しかし、ここにきて――引田が予想しない事が起きた。 かつては《旧校舎の美術室だった世界》から《今は雪のように真っ白くなった世界》には、まだ――【ネムロ】が、しぶとく残っていたのだった。

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