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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside
「ああ、そういえば《我らの最高傑作であるビックリハウスに連れていくぞ……実験体1号》とか《はい、ダディ……その子達は新たなる実験体となるのですね》とか、訳の分からない事を……二人の男達が言っていたんデス――何のことなんデスかね?」
「なるほど、それで――私が気絶している間に……そいつらが何処に行ったかは分かるか?」
「そ、それがデスね……サン様が変な乗り物に乗っていた時に鳴っていたフエっていう音が再び鳴ったかと思うと――忽然と姿を消してしまったのデス。それに、それに――この部屋、何かがおかしいんデス!!」
ライムスが珍しく、今までにないくらいに動揺しながら話したため――サンはチラリと目線を部屋全体へと移してみる。
そこで、ある事にサンは気付いた――。
その部屋は一見は、こちらの世界の一般的な家屋の子供部屋のように思えた。部屋の中には、小さな女の子が好むようなフェアリー、カーバンクル、ホワイトラビットといった可愛らしい造形の縫いぐるみが沢山置いてある。
中には、ライムスに似たようなスライムまでもが縫いぐるみとなって、その場に置かれていた。
無論、不特定型のスライムが、そっくりそのまま縫いぐるみになるなど不可能に近いのだが1つだけ方法がある。
《トロ・トローリ》と呼ばれるスライムの亜種に《ハクセイ》と呼ばれる黒魔術をかければ出来るらしい。以前、サンはミストがその事について、『ハクセイは主に地位が高い悪趣味な奴等によって観賞用に使用するんだけど、そいつらは魔物の命を何だと思っているのかな?』とボヤいていたのを思い出した。
それは、ともかくとして――部屋の中は、そのように特に訝しがるような状態ではなかったのだが、ある一点だけは何となく異様な雰囲気なのだ。
その部屋の中を、ぐるりと囲むように周りの壁全てが鏡張りにされていて部屋中をびっしりと鏡が覆っているのだった――。
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