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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside

壁一面に張り巡らされた鏡を見ていると、グル、グル――グル、グルと世界全体が回っているかのような感覚に陥る。 それとも、世界全体ではなく自分の体がグル、グル――グル、グルと回っているのか確信が持てなかったサンは先程も見つめていた女の子が好みそうな魔物の縫いぐるみへと視線を移してみた。 グニャ――グニャリ―― 無論、音などはしないのだが――壁一面に張り巡らされた鏡から魔物の縫いぐるみへと目線を移した途端に縫いぐるみが歪んでしまったかのようにサンの目に入ってきた。 今のサンには、先程の縫いぐるみの可愛さなど微塵も感じられないくらいに醜悪な姿へと唐突に変化してしまったように見えた。 「おい、ぐにゃ……いや、ライムス。お前、先程この部屋がおかしいと言っていたな。それは、この壁の鏡に関する事か?」 「……は、はい!!このカガミを見た途端に、何か変な感じがして……それで、周りの景色が……ずっと……ぐにゃぐにゃしてるんデスよ。現に、今も……サン様の後ろにある可愛いドラゴンの縫いぐるみが……ぐにゃぐにゃしてるんデス――」 ―――ライムスに言われて気がついたサンは後ろを振りむいた。 この部屋には、女の子が好むような魔物の縫いぐるみだけでなく、小さな男の子が好むようなドラゴンの縫いぐるみが何個か置かれていた。おそらく、女の子が好むような魔物の縫いぐるみ達と同じく《ハクセイ》の黒魔術がかけられているのだろう。 もちろん、そのドラゴンの縫いぐるみに目を移したサンにもグニャ――グニャリと歪んで見える。 と、そこで―――鏡に異変が起こる。 ――ピシッ―― ――パキッ―― ――ビキッ――ビシッ――!! サンとライムスが立っている真正面の鏡の一部分が音を立てながら徐々にヒビが入っていくのだ。その異変に気付いたサンとライムスは互いに不安と恐怖に押し潰されそうになりつつも、ドラゴンの縫いぐるみから目線を真正面のヒビが入っている鏡へと慌てて目線を戻したのだった。

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