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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside
――ボヨンッ!!
「……く、くそっ……一体、どこから攻撃されているんだっ!!?」
普通の種族ならば、その身が血に染まってしまいそうな程に容赦のない鋭い白銀の爪での攻撃だ。もっとも、ライムスは普通の種族からは少しかけ離れた特殊ともいわれているスライムなので幸いにも、その身から血がしたたる事もなく僅かばかり遠くに飛ばされただけで済んだのだが――。
何処から攻撃されているのか分からない――いや、サンが恐怖を抱いている根本的な原因が他にある。それは、ライムスを一度攻撃した後だというのに、未だに敵であろうその得たいの知れない存在が姿を現さないという事だ。
しかも、先程のゾンビのような出で立ちの男は、いつのまにか姿を消し去っていた。一体、奴は――どこから現われて、どこへと消えたというのか――。
いや、今はそんな事よりも――遠くへと飛ばされてしまったライムスを助けにいかなくてはいけない――とサンは思い直して急いでピクリとも動かないライムスの方へと駆け寄って行く。
「おい、ぐにゃぐにゃ――大丈夫かっ!?」
「んんっ……く……ゃく………サン……様……ゃく……」
いくら、普通の種族からかけ離れた特殊ともいえるスライムとはいえ、あれほどに鋭い白銀の爪で引っ掛かれて攻撃されたのは衝撃的だったのか――サンの両腕に守られるように抱えられた人型から元々の丸い姿へ自然と戻ってしまったライムスはブツブツと呟いたのだった。
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