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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside
と、その時――急にサンの両腕に抱えられてブツブツと呟いていたライムスの身に異変が起きる。
―――ガブッ!!
ふいに、ライムスの内面が黒い靄のようなものにジワリジワリとゆっくり覆われていき――やがて完全にライムスの身全体が黒く染まったかと思えば、急速なスピードで人型の姿へと戻ると――そのまま口を大きく開けて、あろう事か鋭く尖った黒い牙で仲間である筈のサンの腕へと噛みついてきたのだ。
「…………ぐっ……!!?」
【忌々しい――エルフ――エルフ、自分が一番偉いのだと――信じて疑わない――忌々しいエルフなんていなくなればいいのだっ……!!】
ふと、ライムスがサンの腕の中で抱えられていた時と異変を感じた今とでは呟いている内容が違うという事に気付き、危機感を抱いたサンは異常な状態であるライムスを見捨ててしまうようで内心モヤモヤしつつも慌てて距離をとった。
―――普段は何も考えていなさそうで、まるで子供のように素直で無邪気なライムスが唐突に己に対して憎悪とも呼べる感情を顕にしたのだ。
(くそっ…………どうして急に、ライムスが私に対して……憎悪を抱いたんだ!?しかも、あの姿――まるで今までのライムスとは別のもののようだ……っ……)
サンが心の中で悶々と思い悩んでいるいる事など構わないと言わんばかりに、段々と――異変の起きたライムスの姿が変わっていく。
サンが心の中で悶々と思い悩んでいるいる事など構わないと言わんばかりに、段々と―――異変の起きたライムスの姿が変わっていく。
『――サン様やご主人様達といると、ニンゲンや他の種族に嫌われていた事なんて忘れてしまうくらい――楽しいんデスよ』
『以前は――意識していないと、その相手の怖がる物や人に変身してしまっていたのデス。そうすると自然と周りの方は離れていってしまって――。でも、サン様達と出会ってからは――そんな事は一度もなくて……やっぱり信頼できる仲間っていいものデスね』
ふと、以前ポロッと話していたライムスの言葉が頭をよぎる。その時は疲れていたせいもあり、素っ気ない態度を取ってしまったから――もっと真剣に話しを聞いてやれば良かった、とサンが深く後悔をしている間にさえ異変が起きたままの黒いライムスは、サンにとって嫌でも見覚えのある一人の忌々しいニンゲンの男――奴隷商人の男へと変身するのだった。
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