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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside
▽ ▽ ▽ ▽
【―――弱虫エルフ、恐怖から逃げているだけじゃ何も変わらないよ。むしろ、君にとって不都合になるだけだよ?】
―――フワッ
【――いつまで過去に囚われてるつもり?弱虫エルフのサン――君には為すべき事があるだろう?】
【こんな所で躓いてちゃ――話にならないよ――約束、思い出してね?】
―――フッ!!
その言葉を最後に、真っ黒な鏡に移り込み―――サンの心を戸惑わせた彼にとっては見慣れた男の子の姿が完全に消え去ってしまった。
(そうだ――あの方との――約束、それを果たす為にも、こんな所で躓いている場合ではない。早く――ライムスを正気に戻さなくては!!)
――ビシッ……
―――ビシィッ……!!!
まだ僅かに残っているライムスの良心とドッペル虫に支配されそうになっている憎悪と悪意に満ちた禍々しい感情とが葛藤を続けて躊躇っていたために、少しの間――動きを止めていた黒いライムスが再び鞭をしならせ、サンに恐怖心を抱かせるために、わざと鞭を床に打ち付けながら――彼へと近付いてきた。
――ヒュッ!!
そして、またしてもサンの頭上で鞭を持つ手を振り上げた。
――グイッ
鞭を持った手が己へと近付いてくるタイミングを見計らい、サンは自分からライムスの腕を掴むと――そのまま力任せにグイッと己の方へと引っ張った。
その反動で自然と黒いライムスがサンの体の上へと倒れ込む。サンは余りの予想外の出来事に唖然としている様子の彼をそのまま引き寄せると――、
――チュッ……
そのまま、未だにサンの記憶の中にいる奴隷商人の男の姿のままの黒いライムスの唇へと自らの唇を深く重ねるのだった。
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